認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

「リーキーガット」があると認知症になりやすくなる!?①

前回は未消化の食物は「万病のもと」なので、健康のためにはしっかり胃腸をケアしながら消化力を高める食事習慣を持つことが大切だというお話をしました。

また人間が一番消化しにくいのは「タンパク質」であり、未消化の「タンパク質」が「リーキーガット症候群」を引き起こす一番の原因になると同時に、認知症発症の原因にもなると考えられているため、今回はもう少し詳しく「リーキーガット症候群」についてお話ししたいと思います。

 

口からに入った食べ物は胃から腸へと移動していきますが、口~腸~肛門までは1本の管になっています。

消化された食べ物の栄養分は腸の粘膜から「体内」に吸収され、吸収されなかった分が便となって肛門から排泄されるというように、あくまでも胃や腸という管の中は「体内」ではなく「体外」になります。

そのため腸の粘膜は栄養分を「体内」に吸収したり、身体にとって有害な異物は吸収しないという繊細な働きをしている重要な部位になります。

いわば腸の粘膜は「外界」と接している「関所」だと言えるでしょう。

この大事な腸の粘膜が炎症などによって傷つけられてしまうと、腸の粘膜に「穴」が開いて「関所」としての働きが十分にできなくなるため、身体にとって有害な異物が「体内」に入り込んできてしまいます。

このように腸の粘膜に「穴」が開いてしまって「体内」に「異物」が入り込みやすくなっている状態のことを「リーキーガット症候群」と言うのです。

「リーキー(leaky)」は「漏れやすい」、「ガット(gut)」は消化管のことです。

 

食べ物は口から胃、腸に送られる中で様々な消化酵素の働きを受け、一番小さな物質にまで分解されて初めて腸から吸収されるのですが、「リーキーガット症候群」で腸の粘膜に「穴」が開いていると、一番小さくなる前の段階で腸の粘膜を通り抜けてしまいます。

するとそれらの物質は、本来は「体内」に入ってこない「異物」として認識され、身体を守るための「免疫反応」によって「炎症」が起こり、身体の中で様々な障害を起こしてしまうのです。

そのため食べ物は最小単位までしっかり消化・分解されることが大事なのですが、前回お話ししたように「糖質」「脂質」「タンパク質」という3大栄養素の中では、「タンパク質」が人間にとって一番消化しにくい物質になります。

そして「タンパク質」の中でも、特に小麦に含まれる「グルテン」や乳製品に含まれる「カゼイン」などが分解されにくく「未消化のタンパク質」になりやすいと言われています。

それはもともとこれらの「タンパク質」を分解する消化酵素が不足しやすいからだそうです。

この「未消化のタンパク質」になりやすい「グルテン」や「ガゼイン」などが腸の粘膜に「穴」を開けてしまう訳です。

その他にも「リーキーガット症候群」の原因として添加物や農薬などの化学物質、抗生剤、ストレスなど様々な要因が挙げられているのですが、中でも特に小麦に含まれる「グルテン」の影響がとても大きいそうです。 

 

ではどうして腸の粘膜に「穴」が開いてしまうのか、もうすこし詳しくお話しします。

本来、腸の粘膜の細胞と細胞の間には「タイトジャンクション」という接着剤のようなものがあり、細胞と細胞を隙間なくしっかりつないでくれています。

しかし「グルテン」に含まれる「グリアジン」という物質が腸の細胞膜を刺激して、この「タイトジャンクション」を緩める働きをする「ゾヌリン」という物質を増やしてしまうそうです。

「ゾヌリン」には細胞と細胞の隙間を開けて必要な物質の通過を良くする作用があるため、本来は必要な時に分泌されて必要な物質を「体内」へ入れる役目をしているのですが、毎日のように小麦をとり続けると「ゾヌリン」が分泌され続けてしまい「タイトジャンクション」が緩みっぱなしになってしまうというのです。

そして本来は入ってほしくないような「未消化の食べ物」や「有害物質」「バクテリア」までもが「体内」に入ってきてしまうことになります。

これらの「異物」が体内に入り込むことで、体内のいたるところで「免疫反応」による「炎症」が起こり、「アレルギー」や「自己免疫疾患」といった様々な障害を引き起こすと言われているのですが、脳も例外ではなく「リーキーガット症候群」が認知症を伴う神経変性疾患の原因にもなっているというのです。

 

長くなりましたので、次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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