前回は、腸の細胞をしっかり密着させている「タイトジャンクション」は本来、良い栄養は入れて有害な物質を入れないように必要に応じて開いたり閉じたりしているが、小麦に多く含まれる「グルテン」(を構成する「グリアジン」)が「タイトジャンクション」を緩める「ゾヌリン」の分泌を増加させるため、小麦を食べ続けると「ゾヌリン」が分必され続けてしまって腸の「タイトジャクション」が常に緩んでいる「リーキーガット(=腸漏れ)」の状態になるのだというお話をしました。
今回はその続きです。
「リーキーガット症候群」になると「未消化の食べ物」をはじめとする「有害物質」「バクテリア」などの「異物」が「体内」に入り込みやすくなります。
すると「異物」を排除する「免疫反応」が常に身体の至る所で起こることになり、それが「過剰」になると「アレルギー」、「誤作動」すると「自己免疫」をきたしやすくなるのです。
「自己免疫疾患」とは、本来は自分の身体を守る免疫細胞が「誤作動」して自分の身体の組織まで攻撃してしまうことで起こる疾患のことです。
「自己免疫疾患」には関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、橋本病、Ⅰ型糖尿病、尋常性乾癬など原因不明の多くの疾患が存在しますが、花粉症やアトピー性皮膚炎などの「アレルギー」も本来ならば「無害」なものを「有害な異物」として反応してしまう「免疫の異常」で起こる疾患だと言えます。
しかし「タイトジャクション」の緩みが引き起こすのは、このような疾患だけではありません。
例えば「アトピー性皮膚炎」では、皮膚の細胞の「タイトジャクション」が緩んで皮膚の表面から毒素が入りやすい状態になっているため、荒れた皮膚から「異物」が入り込んで「アレルギー」が起こりやすいのだそうです。
これは皮膚の「タイトジャクション」が緩んでいる状態なので「リーキースキン」と言われます。
そして腸や皮膚で見られるような「タイトジャクション」が何と脳でも見られるというのです。
これを「リーキーブレイン」と言います。
実はこのことを知って、私の長年の疑問が一つ解けました。
もし体内に「有害物質」が入ったとしても、脳には「血液脳関門(blood-brain barrier,;BBB)」というとりわけ厳重な「関所」があるので、まず脳に「有害物質」が入ることはないと昔教えられたことがあるので、長年そう思い込んできたのです。
例外的に「アルコール」や「麻薬」は「血液脳関門」を通れるのですぐに「酔っぱらう」ということや、病気の治療のために脳神経に作用する「薬物」も「血液脳関門」を通れるが、そもそも「血液脳関門」を通過するのは非常に難しいので、治療薬の開発には大変な苦労をされているなどと。
しかし以前お話ししたように「便秘」が続くと覚醒度が落ちて「意識の変容」が起きたり、動作や思考が鈍ったりするのは、腸で悪玉菌が優勢となってそれらが分泌する「有害物質」が脳に影響するためだと言われていたり、最近「歯周病菌」がアルツハイマー型認知症の方の脳で高頻度に見つかり「歯周病菌」がアルツハイマー型認知症の大きな発症要因の一つとされている「アミロイドβ」というタンパク質のごみを増やすことや、「歯周病菌」が作り出す毒素によって脳の炎症が強くなり、免疫細胞の活性化によって脳の神経細胞が攻撃され神経伝達にも異常をきたすという報告があったりして、何でそんなにも簡単に「血液脳関門」を通れるのかと疑問に思っていたのです。
それが腸と同じことが脳でも起こっているということが分かり、納得しました。
つまり、腸で「タイトジャンクション」を緩ませて「リッキーガット」の直接的な原因になるのは「グルテン」によって増やされた「ゾヌリン」でしたが、この「ゾヌリン」が血流に乗って脳に到達すると、とりわけ頑丈な「血液脳関門」にまで作用して「関門」を開いてしまうということなのです。
「リーキーブレイン」でいわゆる「脳漏れ」状態になると、本来は絶対に入ってこないはずの「有害物質」や「細菌」までもが次々に入ってきてしまいます。
するとやはり「異常な免疫反応」が引き起こされて、脳内でも「炎症」が起こりやすくなるのです。
実はこの脳内での「炎症」と「アルツハイマー型認知症の発症」や「認知機能の低下」には深い関わりがあることが分かっています。
そのため「リーキーガット」や「リーキーブレイン」があるとやはり認知症になりやすくなるのです。
これらのことから認知症予防はもちろん健康維持にとっては、腸や脳の「タイトジャンクション」というバリアをいかに良い状態に保つかが大切になるのだと思います。
次回からは「リーキーガット」をいかに予防・改善していくかについてお話ししていこうと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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