認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

「リーキーガット」を予防・改善するには?⑤

前回は「リーキーガット」を予防・改善するための対策として③「リーキーガット」の原因となる細菌や有害物質を減らすことを挙げ、その具体的な方法として食品添加物」や「農薬」をできるだけ摂らないことと「不溶性食物繊維」で有害物質を排出させることをお話ししました。

今回はその続きです。

 

④腸内環境を整えるような食習慣を持つ

腸粘膜の表面には腸内細菌がびっしり敷き詰められ、まるで絨毯のようになって住みついており、総重量は2kgにもなるそうです。

腸粘膜はこれらの大量の腸内細菌で覆われてバリアされており、腸粘膜が行っている有害な物質は通さないでビタミン・ミネラル・栄養素は血管内へ吸収させる「フィルタ」のような働きを腸内細菌がサポートしているのです。

ただ腸内細菌のバランスが崩れて「善玉菌」が劣勢になると「ガンジダ菌」が増殖して腸粘膜に「穴」を開けたり、「悪玉菌」が優勢になって産出される毒素が増えると腸粘膜のバリアがうまく機能しなくなり有害な物質が腸粘膜を傷つけて炎症を起こしやすくなるので「穴」が開きやすくなります。

そのため「リーキーガット」を予防・改善するためには腸内環境を「善玉菌」優位の良い状態に整えることが不可欠になります。

そして腸内環境を整えるためには、前回までにお話ししたような「腸内環境にダメージを与えるようなものは摂らないこと」はもちろん、それとは逆に「腸内環境を整えてくれるようなものを積極的に摂ること」の両方が大切になります。

 

・食物繊維

まず腸内環境を整えてくれる食物として挙げられるのは何といっても「食物繊維」です。

「食物繊維」にはお腹を掃除して便通を促してくれる「不溶性食物繊維」と腸内細菌のエサになる「水溶性食物繊維」がありますが、これらを両方ともバランスよく摂ることが大切です。

「不溶性食物繊維」は腸内細菌のエサにはなりませんが、水分を吸収して便の量を増やし、腸の蠕動運動を促すとともに、人体に有害な毒素や化学物質、重金属などを吸着して排泄するという大事な働きをしてくれます。

「不溶性食物繊維」が豊富に含まれる食品は、前回も紹介しましたように、精製されていない穀物、豆類、繊維質の野菜、さつまいもなどのイモ類、きのこ類があります。

一方の「水溶性食物繊維」は腸内で水分に溶けてドロドロになり、炭水化物などが消化・分解されてできた「糖」と混ざりあって「糖」の吸収を緩やかにしてくれるとともに、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」のエサになってくれます。

そのことで「善玉菌」がさらに増殖し、酪酸や酢酸などの「短鎖脂肪酸」やビタミン類も生成してくれるのですが、この「短鎖脂肪酸」には「悪玉菌」の繁殖を抑える作用の他に、ミネラルなどの栄養素の吸収も改善する作用があり、中でも酪酸は大腸上皮細胞のエネルギー源となって大腸の蠕動運動を促してくれます。

「短鎖脂肪酸」は腸内を弱酸性に保ち、炎症性サイトカインの抑制をしたり、肝臓での脂肪合成を抑制してコレステロールを下げる働きもしてくれるため、腸内環境を整えるにはいかに「短鎖脂肪酸」を増やせるかがカギになります。

「水溶性食物繊維」を多く含む代表的な食品としては、海藻(昆布、ワカメ、もずく、めかぶ、海苔、寒天など)、野菜(モロヘイヤ、オクラ、玉ねぎなど)、イモ類(こんにゃく、里芋、山芋、ごぼうなど)、果物(特に熟したもの、プルーン、アボカド、りんご、キウイなど)などが挙げられます。

海藻のヌメリ成分の「アルギン酸」や「フコダイン」、果物や野菜に含まれる「ペクチン」、ねばりのある野菜に多い「ムチン」、玉ねぎやごぼうに多い「イヌリン」、こんにゃくの「グルコマンナン」などが「水溶性食物繊維」になります。

 

オリゴ糖

「水溶性食物繊維」の他にも「善玉菌」のエサになって「短鎖脂肪酸」を増やしてくれるものがあります。

それが「オリゴ糖」です。

オリゴ糖」は腸内に入るとそのほとんどが「善玉菌」のエネルギーになってくれるそうです。

ただ「オリゴ糖」には様々な種類があり、できるだけ胃で分解されないで腸まで届くものがより効果的になります。

ある機関の研究によると、口に入れたほぼ全量が腸まで到達する「オリゴ糖」には「ガラクオリゴ糖(チーズ生産時の副産物が原料)」と「フラクオリゴ糖(じゃが芋やとうもろこしの澱粉、味噌・醤油に含有される)」、「ビートオリゴ(ラフィノース)」があり、その他の「オリゴ糖」の中には口にした量の20%程度しか腸まで到達しないというものもあるそうなので注意が必要です。

また「オリゴ糖」が多く含まれる食品としては、玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガスなどの野菜類、バナナ、大豆などがあります。

 

・菌体成分

腸内環境を整えてくれるものとして最後に挙げるのが乳酸菌やビフィズス菌などの「菌体成分」です。

前述したような腸内細菌のエサになるものではなく、おなじみのヨーグルトや発酵食品などに含まれる有用な乳酸菌やビフィズス菌といった菌そのものを摂取して腸内環境を整えるというものです。

ただTVのCMでよく「生きた菌が腸まで届く」などとさかんに宣伝している商品がありますが、腸内細菌研究のパイオニアである光岡知足先生によれば「生きた菌が腸に届いて増えることはなく」、生きている死んでいるに関わらず菌の「菌体成分」が腸管の免疫を刺激して腸内が活性化されるそうです。

ヨーグルトや乳酸菌飲料、ぬか漬け、キムチ、納豆、味噌などで生きた菌をそのまま摂っても良いし、それらを加熱調理して死んだ菌を摂っても良いので、とにかく「菌体成分」が腸に届きさえすれば腸管の免疫を刺激してくれるというのです。

そのため注意しなくてはならないのは、摂取した生きた菌が腸内に根付いて増殖する訳ではないため、有効な成分が身体の外に排出されてしまえば効果がなくなってしまうということです。

したがって「菌体成分」も「食物繊維」同様に継続して摂取しなくてはいけません。

腸内環境を整えるためには「食物繊維」「オリゴ糖」「菌体成分」などを日常的に摂取する食習慣を持つということが大切なのです。

 

長くなりましたので、次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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