前回は「リーキーガット」を予防・改善するための対策として⑤腸粘膜の保護と修復に直接的に作用する物質を摂ることを挙げ、腸粘膜の保護と修復が期待できる栄養因子(抗酸化物質、腸粘膜の栄養素、消化酵素、乳酸菌やビフィズス菌などの菌体成分、食物繊維)のうち、まずは抗酸化物質の働きについてお話ししました。
今回から具体的な抗酸化物質をいくつか挙げていきます。
・抗酸化物質
a.ケルセチン
ケルセチンには高い抗酸化作用と抗炎症作用のほか、抗動脈硬化作用、抗癌作用、降圧作用、脳血管疾患の予防、強い血管弛緩作用、肝障害・糖尿病・肥満・メタボリック症候群の予防・改善、抗ヒスタミン作用によるアレルギー症状の抑制、関節症の症状緩和、腸内環境の改善など実に多彩な効果があることが報告されています。
さらには抗酸化物質と同じく「活性酸素を消去して酸化ストレスを減らすもの」として前回紹介した「抗酸化酵素」のグルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼの発現も誘導してくれるため、ケルセチンは非常に優秀な物質だと言えます。
ケルセチンは野菜や果物に含まれるポリフェノールの一種ですが、ポリフェノールはそもそも植物が自らを活性酸素から守るために作り出したものなので強い抗酸化作用を持っています。
ケルセチンはポリフェノールのうちフラボノイド類に分類されますが、フラボノイド類は分子内にフェノール性水酸基を持っており、水酸基には活性酸素を捕えて除去する能力(抗酸化力)があるため、ケルセチンには強い抗酸化作用があるそうです。
またケルセチンはルチン、ヘスペリジンと並んで「ビタミンP(ビタミン様物質)」のひとつでもあります。
ビタミンPは同じく抗酸化作用を持つビタミンCの吸収率を促進するという優れた働きをしてくれます。
ビタミンCには熱によって分解されてしまうという性質があるのですが、ビタミンPにはそれを保護してくれる作用があるので、一緒に摂るとより効果的なのです。
このようにケルセチンには非常に多くの健康効果を期待できるため、ヨーロッパではケルセチンを含んだ抗ヒスタミン剤が医薬品として認定されています。
ちなみにケルセチンに抗炎症作用があるのはヒスタミンの生成や遊離など炎症に関与するいくつかの過程を抑制するためであり、それが様々なアレルギー症状を緩和させるのです。
アレルギーがある方の体内にアレルゲン(抗原)が入ると免疫細胞が反応して抗体が作られますが、すでに体内にある抗体が肥満細胞(免疫細胞)にくっつくとヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が分泌され、鼻水やかゆみなどのアレルギー症状が引き起こされます。
ケルセチンにはこの炎症反応を引き起こす原因になるヒスタミンの発生を抑える作用があるため、アレルギー症状を軽減させるのです。
また同時にケルセチンには腸内環境を改善させる作用もあるので、強いヒスタミン抑制作用とも併せて花粉症やアトピー性皮膚炎といったアレルギー体質の改善が期待できるとされています。
このように高い健康効果を期待できるケルセチンですが、私たちの身近にある野菜・食材に含まれているので日常的に食事で摂取することができます。
ケルセチンが含まれている野菜・食材には玉ねぎ、緑茶、アスパラガス、ピーマン、りんご、サニーレタス、ブロッコリー、モロヘイヤ、そば、パセリ、トマトなどがありますが、含有量がダントツで多いのが「玉ねぎ」になります。
ある報告によると緑茶2mg/100g、アスパラガス10~40mg/100g、ピーマン12mg/100g、ミニトマト3~4mg/100gなどに対し、玉ねぎは100gあたり10~50mgも含まれています。
また夏場よりも冬場の玉ねぎの方が数倍ケルセチンが多く含まれている傾向があり、さらに日本の玉ねぎのケルセチン含有量は10~50/100gですが、北海道産の玉ねぎに限るとケルセチン含有量が30~50mg/100gと多いそうです。
もっとケルセチンの含有量を増やすには玉ねぎを天日干しにすると良いそうです。
玉ねぎの皮をむいて丸のままアルミホイルの上に置き、室内でも良いので1週間ほど天日干しにするとケルセチンの量が3.5倍になったという実験報告もあります。
ただケルセチンは脂溶性なので、摂取しても身体に吸収されにくい性質を持っています。
せっかくのケルセチンも身体に取り込めなければ効果を発揮することができません。
ケルセチンに糖(グルコース)がくっついた物質に「ケルセチン配糖体」というものがあるのですが、これは水溶性であり、小腸でケルセチンに加水分解されやすく体内への吸収率が高くなっているそうです。
ケルセチンとケルセチン配糖体混合物を経口投与したラットの実験で、ケルセチン配糖体の体内吸収率がケルセチンと比べて130倍と大幅に高くなり、血中の抗酸化活性も投与後、数時間に渡ってケルセチン配糖体の方が顕著に高かったという報告もあります。
実はこのケルセチン配糖体が豊富に含まれているのが「玉ねぎの皮」になります。
玉ねぎの皮にはケルセチン配糖体が100gあたり何と1000~1500mgも含まれており、玉ねぎの中身よりも30~150倍も多く含まれていることになります。
ちなみにケルセチンは黄色の色をしており、皮の色が濃い方が含有量が多くなっているので、玉ねぎを選ぶ時は色の濃いものを選ぶと良いそうです。
摂取方法についてですが、玉ねぎの皮ですのでケルセチン配糖体を煮出してスープやお茶にして摂取するのが良いと思います。
ただ玉ねぎの外側の皮になりますので無農薬で作られたものが良いかもしれません。
煮出す方法としては玉ねぎ1~2個分に対して水を1リットル用意し、鍋で水から煮出していき、5~10分ほど弱火で沸騰させればでき上がりになります。
最後になりますが、ケルセチン摂取によって認知機能が改善する可能性についても報告されています。
早期アルツハイマー病患者さんが4週間ケルセチン高含有玉ねぎを毎日摂取した時のみ記憶機能が改善されたという報告と、高齢者ボランティアの方が5か月間ケルセチン高含有玉ねぎを摂取した時のみ認知機能検査の点数が高くなったという報告がありました。
ケルセチンにはこれだけの可能性があることには驚くばかりですが、身近な食べ物、特に玉ねぎの皮という捨ててしまうものの中に大量に含まれており、誰でも気軽に試すことができるというのもケルセチンの優れた点ではないでしょうか。
長くなりましたので、次回に続きます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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