認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

「リーキーガット」を予防・改善するには?➉

前回までに「リーキーガット」を予防・改善するための対策として⑤腸粘膜の保護と修復に直接的に作用する物質を摂ることを挙げ、腸粘膜の保護と修復が期待できる栄養因子(抗酸化物質腸粘膜の栄養素消化酵素乳酸菌やビフィズス菌などの菌体成分食物繊維)のうち、前回は腸粘膜の栄養素として非常に優秀な亜鉛についてお話ししました。

今回はその続きです。

 

・腸粘膜の栄養素

b.グルタミン

グルタミンはタンパク質を構成するアミノ酸の一つで「非必須アミノ酸」に分類されています。

「非必須アミノ酸」とは体内で生成可能なアミノ酸のことであり、体内で十分に生成できないものは「必須アミノ酸」と言われ、体外から摂取しなければならないものになります。

ただグルタミンは体内で生成されるので普段は体外から補充する必要はありませんが、ケガをした時や手術をする時、運動をする時など身体に大きな負荷やストレスが掛かる時には不足しがちになるため、グルタミンは「非必須アミノ酸」の中でも「体内での生成が間に合わない時は体外から摂取する必要」がある「準必須アミノ酸」にも分類されています。

 

身体を作るアミノ酸は20種類あり、その中で「非必須アミノ酸」は11種類ありますが、その半分以上が「グルタミン」であり、生体内で最も豊富な遊離アミノ酸になっています。

このグルタミンはすべての遊離アミノ酸の約60%を占めていることに加え、さらに多くのグルタミンが筋肉細胞内に貯蔵されています。

グルタミンの代謝は、消化管粘膜上皮、肝細胞、腎細胞、白血球などでグルタミナーゼという酵素によってグルタミン酸アンモニアに分解され、その時にエネルギー(ATP)が産生されます。

反対にグルタミンの合成は、この逆の反応が骨格筋、肺、脳、心筋、肝臓などにおいて今度はエネルギー(ATP)を消費して行われますが、グルタミン合成のほとんどは筋肉内で行われています。

その後グルタミンは血液中の遊離アミノ酸になり、小腸のエネルギーとして使われることになりますが、グルタミンは健全な小腸粘膜を維持するために最も重要な栄養素とされています。

 

身体に大きな負荷やストレスが掛かると筋肉内に貯蔵されたグルタミンが放出されて身体の需要に応えるのですが、その状態が長引くと筋肉量の減少を招くとともに、身体の需要に合わせて筋肉でグルタミンを合成・放出して供給することが難しくなります。

すると小腸の粘膜では必須栄養素であるグルタミンが不足するため粘膜の萎縮が生じ、さらには腸管の免疫機能の低下を招くことになります。

手術などで身体に大きな負荷が掛かって経口摂取も全くない状態において、グルタミンの投与によって小腸粘膜の形態と免疫機能が改善されたという研究報告もあることから、小腸の粘膜維持にとってグルタミンがいかに重要な役割を果たしているかが分かります。

このグルタミンの作用には実に多くのものがありますので以下にまとめますと、骨格筋タンパク合成促進・崩壊抑制、小腸粘膜細胞の主要エネルギー源、大腸粘膜の重要なエネルギー源、腸管でのナトリウム・水吸収促進、腸管粘膜バリア機能維持、免疫系細胞の主要エネルギー源と賦活作用、膵外分泌作用の主要エネルギー源、分裂細胞の核酸合成の促進、創傷治癒促進、グルタチオンの合成を介して抗オキシダント作用、抗うつ作用などになります。

 

ただグルタミンはすぐにアンモニアグルタミン酸に分解されてしまうという不安定な性質があることから、食品からグルタミンそのものを摂取することは難しく、体内でグルタミン合成の材料になるグルタミン酸を多く含む食品を摂取して補充することになります。

実際に食事でグルタミン酸摂取量を3倍にするとグルタミンの腸内含有量が4.8倍になったという研究報告もあります。

食品の中でグルタミン酸の多いものとしては、穀物類の中の小麦タンパク、肉類のゼラチン、魚介類のかつお節・昆布、豆類の高野豆腐・大豆・きな粉・油揚げ、野菜類の枝豆・そら豆・かんぴょう・干しシイタケ、発酵食品などがあります。

 

実はグルタミン酸は名前の由来ともなっている「グルテン」に非常に多く含まれているのですが、以前お話ししましたようにグルテンは「リーキーガット」を作る主要な原因の一つになっているため、グルテンを含む小麦食品を多く摂ることは控えなければいけません。

またグルタミン酸は「うま味調味料」に「グルタミン酸ナトリウム」として大量に含まれています。

グルタミン酸は神経系にとっては興奮性の神経伝達物質でもあるため、過剰摂取すると「興奮毒素」となり、逆に神経細胞を損傷してしまう可能性が指摘されています。

特に「うま味調味料」でグルタミン酸を過剰摂取することの危険性については様々に論じられているところですので、グルタミン酸は小麦食品を除いた他の食品から幅広く摂取するのが良いでしょう。

グルタミンは小腸粘膜の主要なエネルギー源で健全な小腸粘膜を維持するために最も重要な栄養素ではありますが、何でも「そればっかり」というのはダメで、やはり「中庸」であるとか「バランス良く」というのが大事なのだと思います。

 

長くなりましたので、次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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