認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

「リーキーガット」を予防・改善するには?⑫

前回までに「リーキーガット」を予防・改善するための対策として⑤腸粘膜の保護と修復に直接的に作用する物質を摂ることを挙げ、腸粘膜の保護と修復が期待できる栄養因子(抗酸化物質腸粘膜の栄養素消化酵素乳酸菌やビフィズス菌などの菌体成分食物繊維)のうち、前回は腸粘膜の栄養素としてビタミンAについてお話ししました。

今回はその続きです。

 

・腸粘膜の栄養素

d.エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、γ-リノレン酸(GLA)

EPA、DHA、GLAは多価不飽和脂肪酸であり、EPAとDHAはオメガ3脂肪酸、GLAはオメガ6脂肪酸に分類されますが、いずれも私たちの体内では合成できない必須脂肪酸とされています。

これら多価不飽和脂肪酸の健康への効能については多くの研究報告がありますので、以下にその一部を挙げてみます。

 

・オメガ3脂肪酸を食事から多く摂取すると心血管系疾患リスクを低減させることが示唆されており、米国心臓病協会は全ての成人は魚、特に油脂の多い魚を少なくとも週2回食べるよう推奨している。

・オメガ3脂肪酸の摂取量を多くすると、心筋梗塞や冠動脈心疾患の人々の心臓突然死を減少させることが示唆されている。

・DHAが低い状態だとアルツハイマー病などの認知症になりやすい。

・EPAやDHAの摂取量を増やすことが2型糖尿病、特に血清中トリグリセリド(中性脂肪)が高い人々に有効な可能性がある。

・リウマチ性関節炎患者において、魚油(EPAとDHAが豊富)の補給が関節圧痛を緩和し抗炎症性薬の必要量を減少させることが認められている。

・オメガ3脂肪酸の摂取量が増えると、体内で作られる炎症性サイトカイン(炎症誘発性化合物)が減少する。

・EPA、DHA、GLAがヒト粘膜上皮細胞の膜リン脂質に取り込まれると、炎症性サイトカインによって引き起こされる透過性亢進を阻害する。

 

EPA、DHA、GLAには動脈硬化の改善、脂肪分解の促進、インスリンの分泌と感受性の改善、炎症の抑制、アレルギーの改善など様々な作用が認められていますが、特に炎症などで傷ついて透過性が高まっている腸粘膜を補修してバリア機能を向上させるとともに、炎症を誘発する物質の産生を防ぐ作用も認められているのです。

ではこれらの成分が多く含まれる食品にはどんなものがあるのかと言いますと、まずGLAは母乳や月見草油に含まれますが、これらを日常的に摂取するのは難しいと思います。

そこで「リノール酸」を含む食品を摂り、それを体内でGLAに変換してもらうことになるのですが、リノール酸は大豆油やコーン油といった代表的な植物油に豊富に含まれています。

ただリノール酸は必須脂肪酸ではありますが、過剰に摂取してしまうとかえって免疫細胞が働きにくくなってアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性疾患を引き起こしたり、動脈硬化や心臓疾患などを誘発してしまう可能性があるため、適度な摂取が望ましいとされています。

具体的な摂取の目安として厚生労働省は「オメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸=1:4」のバランスを推奨しているのですが、現代人の多くは食生活の欧米化でリノール酸などのオメガ6脂肪酸を過剰摂取している傾向があるそうです。

このオメガ6脂肪酸であるリノール酸は、菓子やパン、マヨネーズ、カップ麺、総菜などの加工食品やファーストフードに多く含まれているため、知らず知らずのうちに過剰摂取している傾向があり注意が必要です。

ちなみに加工食品の原材料表示をチェックして「植物性油脂」と表示があればリノール酸が含まれていると考えて良いでしょう。

そのため現代の食生活においては、体内でのGLA産生量を増やす目的でわざわざリノール酸を含む食品を摂取しなくても良いと思われます。

 

反対に不足しがちなのがEPA、DHAなどのオメガ3脂肪酸になります。

EPA、DHAが豊富に含まれているのが魚の脂であり、具体的にはマグロのトロやさば、はまち、さんま、いわし、ブリなどの脂が豊富な魚類になるため、これらの食品を通じて週2~3回程度摂取するのが望ましいとされています。

ただ最近は魚を食べる機会が少なくなっている人も多いと思われますので、そのような人は魚の代わりにエゴマ油やアマニ油を1日小さじ1杯程度摂ると良いとされています。

エゴマ油やアマニ油に含まれる「αリノレン酸」が体内でEPAやDHAに変換されからです。

ただαリノレン酸は熱に弱くて加熱調理に向かないので、エゴマ油やアマニ油はドレッシングに使ったり、おかずやスープなどへ仕上げにかけたりすると良いでしょう。

また酸化しやすいので密閉して冷蔵保存することが大切です。

 

長くなりましたので、次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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