「生活習慣病」とは、食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が深く関与し、発症の原因になっている疾患の総称になります。
日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、さらに脳血管疾患や心疾患の危険因子になる動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であるとされています。
そして「認知症」も睡眠、食事、運動などの日常的な生活習慣が発症に深く関与していることが知られています。
かつて100歳という長寿でテレビの人気者だった双子の姉妹「きんさん、ぎんさん」は、ユーモアがあってとても明るく、元気いっぱいでした。
2人の死後、彼女たちが最後まで元気に天寿を全うできた理由を探るために様々な研究がされているのですが、ぎんさんについては脳が病理解剖されています。
その結果、ぎんさんの脳は典型的なアルツハイマー病であり、しかも相当に進行した状態だったそうです。
ぎんさんはアルツハイマー病の進行した脳であったにも関わらず認知機能は保たれていました。
これは脳に老人斑や神経原線維変化が認められて、たとえアルツハイマー病を「発病」していたとしても、必ずしも認知症を「発症」するわけではないということです。
そのため、認知症を伴う神経変性疾患を「発病」していても認知症を「発症」しないためにはどうしたらいいのか、その答えが「きんさん、ぎんさん」の送っていた日常生活に隠されているのではないかと考えられ、研究対象になっているのです。
つまり彼女たちの大家族で摂る品数の多い食事、毎日30分の散歩や日常的な階段昇降といった運動、テレビ出演をきっかけにした社会的活動などを通じたハリのある生活などが大事なのではないかということです。
そうするとやはり「認知症」も「生活習慣病」そのものではないかと言えないでしょうか。
「睡眠不足」はメタボリック・シンドロームのリスクを大きく上げる
生活習慣の中でも、見落とされがちなのが「睡眠習慣」だと思われます。
実は「睡眠不足」があるとメタボリック・シンドローム(メタボ)になりやすいと言われています。
メタボとは、内臓脂肪蓄積を基盤とした複合リスク病態のことであり、生活習慣病に含まれる「肥満」、「高血圧」、「高血糖」、「脂質異常症(高脂血症)」などが重なって脳血管障害や心疾患などの発症リスクが高まった状態であると言えます。
これらの4つのメタボ危険因子のうち、肥満、高血圧、高血糖については「睡眠不足」によって悪化することが分かっています。
また残りの脂質異常症についても「睡眠不足」の影響を受けるとされています。
そのためアメリカではメタボの予防と解消には、まずは「睡眠不足をなくすことが大事」と以前から認識されているそうです。
「睡眠不足」だと太りやすくなる
アメリカのコロンビア大学の調査によると「7~9時間睡眠の人に比べ、4時間以下の睡眠の人は肥満率が73%高く、5時間睡眠の人でも肥満率が50%高い」そうです。
また、アメリカのスタンフォード大学の調査によると「短時間睡眠の人は、食欲亢進ホルモンのグレリンが増加し、食欲抑制ホルモンのレプチンが減少する」そうです。
そのため睡眠時間が短くなるほど食欲が増進してしまい、炭水化物や甘い物などの糖質摂取が過剰になりやすく太りやすくなるのです。
さらに寝不足で疲れていると動くのが億劫になるので身体活動量が減りやすく、エネルギー消費量が少なくなるため、余ったエネルギーが蓄積されて太りやすくなるのです。
「睡眠不足」だと高血圧になりやすくなる
アメリカのシカゴ大学の調査によると「5時間睡眠の人は、6時間睡眠の人に比べて高血圧のリスクが37%高まる」そうです。
コロンビア大学による調査でも「5時間以下の睡眠の人は、7~8時間睡眠の人に比べると高血圧になる確率が2倍になる」という結果が出ています。
血圧は自律神経の支配を受けているので、「睡眠不足」が続いて交感神経優位の状態が続くと、血圧はもちろん心拍数や呼吸数も上がりやすくなるのです。
「睡眠不足」だと高血糖になりやすくなる
「睡眠不足」があると糖代謝能力が低下し、血糖値が高くなりやすいことが分かっています。
睡眠時間と糖尿病の関係について様々な研究がされていますが、それらによると「睡眠不足」や「不眠」によってⅡ型糖尿病の発症率が2倍になるそうです。
このように「睡眠不足」があると、肥満や高血圧、高血糖になりやすく、メタボになる危険性が高くなるのです。
ちなみに高血糖のある方は、食事の前後で血糖の急激な変動が起こっている可能性が非常に高いと言われています。
血糖の急激な変動は「グルコーススパイク」とも言われ、血管を傷つけ動脈硬化を引き起こす大きな要因にもなっています。
動脈硬化が進行すると当然、心筋梗塞はもちろん脳梗塞や脳出血などを起こしやすくなります。
そのため頭部MRI検査などをすると、気付かないうちに小さな脳梗塞を起こしていたりして、それによって血管性認知症やパーキンソン症状が出ていたという症例も少なくありません。
またアルツハイマー病は第三の糖尿病とも言われているほどで、脳細胞がブドウ糖をエネルギー源としてうまく使えなくなるため、脳がもっと糖を欲しがるようになります。
そのためアルツハイマー病が進むにつれて、手っ取り早くブドウ糖になる「甘い物」を欲するようになってきます。
甘い物や糖質を多く含む食品の過食によって、さらに高血糖や糖尿病のリスクが高まることはもちろん、アルツハイマー病も進行しやすくなります。
糖尿病の方はそうでない方に比べるとアルツハイマー病には2倍、血管性認知症には3倍なりやすいという調査報告もあるほどです。
このように「睡眠不足」があるとメタボになりやすく、肥満、高血圧、高血糖などによって「認知症」になりやすくなってしまいます。
したがって「生活習慣病」にならないようにするためには、生活習慣の中でも「睡眠習慣」には特に気をつけ、日頃から「睡眠不足」にならないようにすることが大事になるのです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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