認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

免疫力を強化して新型コロナと向き合おう(2)

前回は、今世界で大流行している新型コロナウイルス感染症は、ウイルスが変異しやすく現在進行形で新たな変異株が生まれている可能性が高いというお話をしました。

今回はその続きになります。

 

ウイルスの病原性が高まった変異株が発見されている

4月19日に中国の浙江大学による「患者を経由した変異はSARS-CoV-2の病原性に影響を与える」という研究が発表されました。(Patient-derived mutations impact pathogenicity of SARS-CoV-2

この報告によると、浙江大学附属病院の新型コロナ入院患者からランダムに11人を選び、SARS-CoV-2ウイルス(=新型コロナウイルス)分離株を特定したところ、合計で33種類の変異が確認され、そのうち19の変異は新種だったそうです。

さらに、これらのウイルス分離株を試験用の培養細胞に感染させたところ、細胞の変性効果とウイルス量に最大約270倍の差異が見られ、攻撃的なウイルス株のほとんどが最も弱いウイルス株に比べて約270倍ものウイルス量を生み出すことが分かったそうです。

また研究チームは、一部の突然変異がウイルスのスパイク・タンパク質の機能変化に繋がる可能性があることを発見し、SARS-CoV-2ウイルスはその病原性をも大幅に変化させるような突然変異をしているようだとしています。

そのため薬物とワクチンの開発は緊急ではあるけれども、このような大幅な突然変異が起きている点を考慮しないと、落とし穴にはまりかねないと注意を喚起しています。

 

特定の病原体に対する「免疫」を高めてくれるワクチン

今、世界中で新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組まれていますが、そもそもワクチンとは、細菌やウイルスなどの病原体から作られた無毒化あるいは弱毒化された「抗原(細菌やウイルスといった病原体など免疫反応を引き起こす物質の総称)」を投与することで、体内にその病原体に対する「抗体」の産生を促すものです。

一般的に病原体に対する「抗体」が産生されると、その病原体に対して抵抗性を持つようになるため、感染しにくくなったり、あるいは感染しても症状が軽くてすむようになります。

この仕組みを利用し、ある特定の病原体に対する「免疫」を高めてくれるのがワクチンであり、そのために新型コロナウイルスのワクチン開発が急がれているのです。

 

人間の免疫システムは「自然免疫」と「獲得免疫」の2段構え

そもそも「免疫」とは、体内に入ってきた病原体や異常な細胞を認識し、それらを撃退・排除することによって身体を病気から守ってくれる強力な防衛システムのことを言います。

この「免疫システム」は、「自然免疫」と「獲得免疫」の2つの仕組みから成り立っています。

「自然免疫」は体内に侵入したあらゆる異物に対して速やかに働きます。

一方で「獲得免疫」は異物ごとに違った免疫反応を起こし、以前リンパ球が経験した免疫反応の記憶をもとに働くのが特徴になります。

このように人間の免疫システムは2段構えになっているのです。

 

「自然免疫」と「獲得免疫」の仕組み

「自然免疫」と「獲得免疫」の2つはうまく連携して働いています。

まず体内にウイルスなどの病原体が侵入すると、免疫の第一部隊として好中球やマクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞などの免疫細胞が働きます。

これらの第一部隊の免疫細胞たちは病原体を自分の体の中に取り込み、細胞内の酵素などによって病原体を分解・消化して排除するのです。

こういった第一部隊による働きが「自然免疫」と呼ばれ、特定のウイルスなどの病原体に対してだけではなく、体内に入ってきた異物全体に対して働いてくれます。

さらに第一部隊の「樹状細胞」は、リンパ節に移動して病原体の性質を第二部隊のヘルパーT細胞に知らせる役割(抗原提示)をしています。

ヘルパーT細胞は第二部隊のいわば司令塔であり、病原体の情報をB細胞に教えて「抗体」の産生を促したり、キラーT細胞に作用して感染してしまった細胞をアポトーシス(自殺)に追い込んだりします。

そして2度目に同じ病原体が侵入してきた時には、一部のB細胞やT細胞がその病原体の情報を記憶(免疫記憶)しており、迅速かつ効率的に病原体を排除できるようにしているのです。

これらの第二部隊のリンパ球による働きが「獲得免疫」と呼ばれています。

基本的にワクチンは、この免疫の第二部隊による「獲得免疫」に働きかけて、特定の病原体に対する免疫を強化するものです。

先述したように新型コロナウイルスは病原体が変異し続けており、その病原性までもが変化し続けている可能性が高いと考えられます。

そのような新型コロナウイルスに対しても、病原体を特定してその「抗体」の産生を促すといった「獲得免疫」を強化するような従来のワクチンが、果たして有効なのかについてはまだ明らかになってはいません。

 

次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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