前回まで、食事習慣などを通じて「自然免疫」を強化することができれば、新型コロナウイルスの感染・重症化予防につながる可能性が高いというお話をしました。
さらに「自然免疫」を高めることは、認知症疾患を含めた多くの疾患の予防や進行を防ぐことにもつながるので、この際みんなで新型コロナウイルスの感染・重症化予防をもたらす生活習慣を徹底することで、もっと健康になってしまいませんかともお話ししました。
今回は、前回「自然免疫」を強化する物質としてご紹介した「ビタミンD」が、新型コロナウイルスの感染・重症化予防につながる可能性が高いのではないか、という調査研究が最近いくつか報告されましたので、それらをご紹介したいと思います。
血性ビタミンD不足するほど新型コロナの重症度が増す!?
まず初めにご紹介する調査研究は、2020年4月15日にフィリピンのサウスイースタンフィリピン大学から報告された「ビタミンD補給は新型コロナウイルス感染患者の臨床転帰を改善する可能性がある」というものです。
この調査研究では、南アジアの国の3つの病院のデータベースを使用して、新型コロナウイルスに感染した212例の臨床的特徴と血液中のビタミンD濃度を色々な角度から分析しています。
まず患者を症状の重さごとに、軽症レベル、一般的な症状レベル、重症レベル、救急レベルの4群に分け、それぞれの血性ビタミンD濃度[25(OH)D]の平均値を算出して比較しました。
すると結果は、軽症レベル:31.2ng/ml、一般的な症状レベル:27.4ng/ml、重症レベル:21.2ng/ml、救急レベル:17.1ng/mlとなり、新型コロナウイルスの重症度が増すほど、有意に血性ビタミンD濃度が低くなることが判明したというのです。
また別の切り口として、今度は患者を血性ビタミンD濃度が正常群(30ng/ml以上)、不足群(21~29ng/ml)、欠乏群(20ng/ml未満)の3群に分け、重症度別の比率を調べました。
すると正常群55人の転帰は、軽症レベル:85.5%、一般的な症状レベル:7.3%、重症レベル:3.6%、救急レベル:3.6%となり、ほとんど重症化していませんでした。
不足群80人の転帰は、軽症レベル:1.3%、一般的な症状レベル:43.8%、重症レベル:28.8%、救急レベル:26.3%となり、軽症レベルで治まった人がほとんどいなくなりました。
欠乏群77人の転帰は、軽症レベル:1.4%、一般的な症状レベル:26.0%、重症レベル:40.3%、救急レベル:32.5%となり、約4分の3の人が重症化していました。
これらのことから、この調査研究では血性ビタミンD濃度が新型コロナウイルス感染患者の臨床転帰を改善する可能性が高いと結論づけています。
つまりビタミンDが充足していれば、仮に新型コロナウイルスに感染したとしても重症化しにくくなり、改善しやすくなる可能性も高くなるというのです。
重症化した新型コロナ感染者のほとんどがビタミンD不足だった!?
次にご紹介する調査研究は、2020年4月24日にアメリカのルイジアナ州立大学ニューオーリンズ健康科学センターから報告された「重症化した新型コロナ感染でビタミン D 欠乏が蔓延している」というものです。
この調査研究では、入院した新型コロナウイルス患者20名の血性ビタミンD濃度[25(OH)D]を調べています。
すると一般病棟レベルの患者では、ビタミンD不足率が57.1%で血清ビタミンD濃度の平均値が29.8ng/mlであり、集中治療室レベルの患者では、ビタミンD不足率が84.6%で血清ビタミンD濃度の平均値が19.2ng/mlだったそうです。
さらに75歳未満の集中治療室患者の100%がビタミンD不足状態であり、加えて、そのうちの64.6%は血性ビタミンD濃度が20ng/ml未満のビタミンD欠乏状態だったそうです。
つまり初めの調査研究と同様に、ビタミンDの不足や欠乏状態が、新型コロナウイルス感染症の重症化を招いたのではないかというのです。
ビタミンD不足と新型コロナ感染症を重症化させるリスク要因
またこの調査研究では、新型コロナウイルス感染症の重症化には、高血圧、肥満、男性、高齢、血液凝固が起こりやすいことがリスク要因になることも指摘しています。
実はビタミンD不足はこれらのすべてのリスク要因と何らかの相関が認められています。
それぞれのリスク要因との相関については、一般的に以下のようなことが分かっているそうです。
・高血圧については、新型コロナウイルス感染者の49.7%が合併しており、ビタミンDが10ng/ml増加すると高血圧の発症を12%下げる。
・肥満については、新型コロナウイルス感染者の48.3%が合併しており、健常者に比べてビタミンDが1.35倍不足している。
・性差については、男性の方が1.24倍多く新型コロナウイルスに感染しており、同様にビタミンDについても男性の方が1.44倍多く不足している。
・高齢については、65歳以上になると新型コロナウイルス感染症による入院率が若年層に比べて2.7~3.7倍になるが、高齢者ではほとんどの人がビタミンD不足である。
・血液凝固については、ビタミンD不足になると血栓を引き起こしやすくなる。
日光浴が体内ビタミンDを増やして新型コロナの発症を防いだ!?
さらに日光浴との関連性についても指摘しています。
ボストンのホームレス避難所では、新型コロナウイルス感染症が陽性だった147人全員が無症状だったそうです。
ホームレスの人は一般的に栄養と健康状態が不良ですが、屋外にいることがほとんどなので日光に当たる時間が長いと言えます。
実はビタミンDを食事からは十分に摂取することは困難で、日光に当たることで皮膚でも合成されているのですが、体内のビタミンD量は食事由来のものが2割程度しかなく、約8割が紫外線由来なのだそうです。
そのため新型コロナウイルスに感染していたホームレスの全員が、体内のビタミン D 量が充足していたために症状が出なかった可能性が高いというのです。
次回に続きます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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