認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(2)

前回は、ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性があることを示す2つの論文の内容をご紹介しました。

今回はその続きになります。

 

新型コロナ感染症では血清ビタミンDが不足するほど死亡率が高まる!?

次にご紹介する調査研究は、2020年4月26日にインドネシアが発表した「新型コロナ死亡率とビタミンDのパターン」というものです。

この調査研究は、インドネシア公立病院で780名の患者を対象に2020年3月2日から4月24日まで行われたもので、血清ビタミンD濃度[25(OH)D]で患者を正常群(30ng/ml以上)、不足群(21~29ng/ml)、欠乏群(20ng/ml未満)の3群にグループ分けし、転帰や死亡率などについて調べています。

すると血清ビタミンD濃度が正常域だった人は全体の49.7%(388名)でしたが、そのほとんどともいえる93.0%(372名)の人が生存していたそうです。

さらに死亡者380名の血清ビタミンD濃度について調べたところ、正常域だった人が16名(4.2%)しかおらず、不足していた人が187名(49.1%)、欠乏していた人が177名(46.7%)となり、何と死亡者全体の95.8%にあたる364名が血清ビタミンDの不足または欠乏状態であったというのです。

この調査研究では、血清ビタミンD濃度と死亡率の関係についても報告しています。

これによると血清ビタミンDが不足している群は、正常群に比べて7.63倍も死亡率が高くなり、欠乏している群は、正常群に比べて何と10.12倍も死亡率が高くなったそうです。

ちなみにこれは、年齢、性別、並存症などの因子を補正したうえでの結果ということであり、血清ビタミンDが不足すればするほど死亡率が高まることを明確に示していると言えます。

 

血清ビタミンDが不足するほど新型コロナ感染症が重症化しやすい!?

次にご紹介する調査研究は、2020年5月5日にインドで発表された「新型コロナ感染軽症および重症の高齢者のビタミンDレベル:予備レポート」というものです。

この調査研究では、南アジアにある2つの三次救急医療センターで治療を受けた176名の患者を対象に、血清ビタミンD濃度[25(OH)D]が正常範囲(30ng/ml以上)にあるか不足(30ng/ml未満)しているかを調べ、軽症者と重症者および持病を持っている人と持っていない人の平均ビタミンD濃度について比較しています。

すると軽症者では、ビタミンD濃度が正常だった人が13名だったのに対し、不足していた人は11名でしたが、重症者では、ビタミンD濃度が正常だった人が21名に対し、不足していた人が何と131名という結果になりました。

さらに軽症者と重症者で平均ビタミンD濃度を比較したところ、軽症者においてもビタミンDが不足状態でしたが、重症者はさらに低下しており欠乏状態に近かったそうです。

この結果より、新型コロナウイルス感染患者のうち、重症化している患者の多くがビタミンD不足であることが分かったとしています。

また、持病がある人とない人で平均ビタミンD濃度を比較したところ、持病がない人もビタミンDが不足状態でしたが、腎臓病、高血圧、糖尿病の持病があった人はさらに低下しており欠乏状態に近かったそうです。

この結果より、新型コロナ感染患者のうち、持病を持っている人の方がさらにビタミンD不足だったとしています。

したがって、この調査研究も先述した調査研究同様に、血清ビタミンD濃度が低下するほど新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい、ということを示唆していると言えます。

 

ビタミンDを体内に増やす生活習慣を心掛けるのも一手では?

このように「ビタミンDが新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ可能性がある」ことを示す論文が各国から相次いで発表されています。

また今回ご紹介した論文の他にも、ビタミンDに関連した論文が数多く発表されており、少なくともビタミンDが人間の免疫力を高めてくれるということは明らかになっています。

もちろんビタミンDに対する過度な期待は禁物ですが、どうしても副作用が出てしまうような製薬に比べれば、ビタミンDという身近な栄養素を摂取することのリスクは明らかに小さいのではないかと思います。

そうであるならば、ご紹介した論文が示唆しているように「ビタミンDを充足させることで新型コロナウイルス感染症の重症化が防げる可能性がある」ことを期待しながら、体内にビタミンDを体内に増やすような食事や生活習慣を心掛けてみるのも一手ではないでしょうか。

 

次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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