認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

高齢者ほど「和式生活のススメ」(7)

前回は、高齢者では生活が不活発になると「廃用症候群」が少しずつ進行していき、それによってさらに生活が不活発になって「廃用症候群」も進行していくという「負のスパイラル」に陥りやすいため、もしそんな状態に陥ってしまったら、できるだけ早く「負のスパイラル」を断ち切る必要があるけれども、心身ともにどんどん弱っていく状態で、高齢者が自ら前向きな気持ちになって日々活動量を上げていくということはなかなか難しいため、他人の手を借りてでも思い切って生活そのものを変えていくしかないというお話をしました。

そして、その時非常に頼りになるのが介護保険サービスであり、中でも通所サービスを導入することができれば、日中起きて活動する時間が増えるとともに、いつの間にか体力や筋力が回復してきて「廃用症候群」の状態から脱しやすくなるというお話もしました。

今回はその続きになります。

 

高齢者に対するリハビリのキーワードは「低負荷・少量・頻回」

高齢者が「廃用症候群」から回復するためには、リハビリはたくさん受けるに越したことはありません。

しかし、そもそも体力が落ちている高齢者では、身体に負荷がかかるような運動を長い時間行うことは困難ですし、ましてや病気やケガなどで「廃用症候群」に陥っている高齢者だとすれば、それはなおさら困難でしょう。

したがって、高齢者にリハビリを実施する際のキーワードは「低負荷・少量・頻回」になるかと思います。

もちろんリハビリの強度や時間、頻度などは、その人の病態や体力に応じて設定されますが、低負荷で少量の運動であれば、体力のない高齢者であっても取り組みやすくなるでしょう。

しかし当然ながら低負荷で少量の運動では、リハビリ効果が少なくなってしまいます。

それを回数で補うのです。

低負荷で少量の運動を1日に何回も繰り返して行っていくということです。

実際、高齢者にとっては、これが非常に有効なのです。

ただ、入院してリハビリ専門職である理学療法士作業療法士などから毎日のようにリハビリを受けられたとしても、リハビリができる時間はせいぜい1日数時間が限度であり、それも一定時間まとめて受けることがほとんどだと思います。

そのため1日に5回も6回も小分けにリハビリを受けるということは、なかなか難しいというのが現状です。

では、どのようにして「低負荷・少量・頻回」のリハビリを実現させれば良いのでしょうか。

答えは簡単です。

リハビリ目的で入院していたとしても、1日の大半は時間は病室などでゆっくり過ごすことになるでしょう。

その時間を利用すれば良いのです。

つまり、普段その人が行っている生活動作をリハビリとして活用するのです。

 

高齢者には生活動作を利用した「低負荷・少量・頻回」のリハビリが効果的

人には、朝起きてから夜寝るまで、毎日生活していく中で繰り返し行っている動作があります。

例えば、朝、目が覚めてまず洗面所やトイレに行き、それから着替えをして、朝食を食べて・・・というようにです。

さらに、これらの生活動作には起き上がりや立ち座り、座位・立位保持、歩行などといった身体活動が必ず伴います。

このような生活動作や身体活動というのは、本人にとっては毎日繰り返し行っているものなので、高負荷で運動量が多すぎるということはないでしょうし、中には行う頻度が高い動作もあると思います。

したがって、生活動作というのは、高齢者に有効な「低負荷・少量・頻回」のリハビリとして活用するのに適していると言えるのです。

また、生活動作を利用したリハビリは、生活の流れの中で自然に促したり、取り組んだりすることができるので、本人の負担感が少なく、どうしてもリハビリをやりたくないという人や話の理解が難しいような認知症の人にとっても実施しやすいものだと言えます。

さらに、本人にとっては毎日の生活の中で楽に継続できたり、リハビリスタッフがいなくても家族や介護スタッフなどが気軽に実施できるといったメリットもあります。

そして何よりも、専門のリハビリスタッフから週1~2回リハビリを受けるより、「低負荷・少量・頻回」に実施できる生活動作を活用して毎日運動に取り組んでいく方が、得られるリハビリ効果ははるかに大きかったりするのです。

では実際に、どのようにして生活動作をリハビリとして活用していけば良いのでしょうか。

それについては次回お話ししようと思います。

 

次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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