前回は、リハビリを効果的に進めていくには「負荷量」の設定が大事であり、本人ができるかできないかのギリギリの「負荷量」で動作・運動していけばいくほど、得られるリハビリ効果が大きくなるというお話をしました。
その点、床からの立ち座り動作に代表される「床上動作」は、高齢者にとっては全身の筋力とバランス能力を要求される比較的難易度の高い動作になるので、日常的に行うリハビリとしても適切な「負荷量」の運動になりやすいというお話もしました。
今回はその続きになります。
入院で体力が落ちた施設入所者が退院して施設の生活に戻ると・・・
前回も少し触れましたが、日常生活の中でリハビリとして「生活動作」を活用していく場合、動作・運動の「負荷量」はどうしても専門的なリハビリに比べると小さくなってしまいます。
そのため、当然ながら1回の動作・運動によって得られる効果も小さくなってしまうのですが、その分生活の中で何度も繰り返して行っていくことで十分カバーできますし、それ以上の効果が得られることもあります。
実際に、そのことを実感させられるようなことがたびたびあるからです。
例えば、施設に入所している人が病気になって数週間から数か月間入院することがよくあります。
すると、施設では日中は車椅子で起きて生活していたり、介助で歩いてトイレに行っていたような人でも、入院中はどうしても治療のためにベッド上で安静を強いられることになります。
すると入院中はベッド上で寝ている時間が長くなるので、たとえリハビリを受けていたとしても、施設に帰ってきた時には体力が落ちてしまって、車椅子に長く座っていられなくなっていたり、起立や歩行が介助でも難しくなっていたり、というようなことがよくあるのです。
それが退院して施設に帰ってくると、朝は着替えに始まってトイレに行き、食事は毎食デイルームで座って食べて、その後も他の入居者さんとデイルームで過ごすようになって・・・というような日常生活を送るようになります。
もちろん、その人の体調や動作能力に応じて日中の過ごし方は変わってきますが、施設では他の入居者さんとの共同生活になるため、基本的に全体の予定に合わせて毎日生活するようになります。
すると、入院で落ちてしまった体力が徐々に回復してきて、いつの間にか入院前の身体状態まで戻っているということがよくあるのです。
これは施設の生活スケジュールに合わせて、半ば強制的であっても必要な「生活動作」を繰り返し行っていくことの効果に他ならないと考えています。
そして、これこそが「低負荷・少量」であっても「頻回」に実施できる「生活動作」を活用したリハビリの本骨頂ではないかとも思うのです。
したがって、高齢者が体力や動作能力を回復させるためには、専門的なリハビリを受けるというのも確かに有効ですが、「日々どのように過ごしていくか」ということこそ、大切にしなければならないと思っています。
数か月デイサービスをお休みした認知症高齢者がデイサービスを再開すると・・・
これは、在宅生活をしている高齢者でも同様なことが言えます。
今回の新型コロナウィルス騒ぎで数か月デイサービスをお休みしたら、ボーっとして発語も少なくなってしまったけれども、デイサービスを再開したら徐々に元の状態まで回復してきたという認知症患者さんが少なくないからです。
高齢者が病院や家にいてずっと寝てばかりいたり、一人でボーっと過ごしていたら、それこそ坂道を転げ落ちるように「廃用症候群」が進行していってしまうでしょう。
ましてや認知症のある高齢者だったら、それはなおさらです。
やはり身体的にも精神的にも、不活発な状態でいたら「使わない機能」は「すぐに衰えてしまう」ことになるのです。
そのため、認知症高齢者の心身機能を維持・回復させるためには「できるだけ入院させない」「できるだけデイサービスなどを利用してずっと家にいさせない」ことが大切であり、それによって日常的に「できるだけ心身の活動性を高く保つ」ことが不可欠なんだと言えます。
「生活動作」を有効に活用するために
また、「生活動作」を活用したリハビリを効率良く実施していくために、リハビリスタッフからアドバイスをもらうのも良いでしょう。
そうすれば、本人が実際はどこまでできるのか、現在の身体の状態や動作能力を確認してもらえるとともに、具体的な介助方法や杖・シルバーカーといった適切な歩行補助具の選定、安全に居室内を移動できるような動線を確保するために伝い歩きできるような家具の配置や手すり・福祉用具の導入などについて、的確な助言をもらえるからです。
そういった意味では、日常生活の「生活動作」がすべて効果的なリハビリにつながるように、本人ができる動作を最大限に活かせるような「生活スタイル」や「生活環境」について提案することも、リハビリスタッフに課された大きな役割の1つではないかと思っています。
次回に続きます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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