前回は、認知症患者さんに通所サービスを導入できるかどうかが、その後の病状経過や人生において大きな分岐点になると言えるほど、認知症治療においては、通所サービスの導入によって得られる効果は大きいが、初めから喜んで通ってくれるような方はほとんどいないので、当院では本人の意思に関わらず、無理やりにでも通所サービスに通わせた方が良いと家族に勧めているというお話をしました。
また、本人の拒否が強い場合でも、通所サービスのスタッフたちはそのような方への対応には慣れているので、すべてお任せしてしまっても良いということや、楽しんで通所サービスに通っている患者さんは、認知症があまり進行していかない印象があること、そして日常生活の中でたくさんの人と交流するという社会性を保ちながら、それぞれの人が「楽しさ」を感じながら時間を過ごすことを目指している通所サービスというは、認知症治療にとっては欠かせない存在になっているというお話もしました。
今回はその続きになります。
通所サービスのメリットをまとめてみます
ここまでお話ししてきたように、通所サービスは認知症治療にとって欠かせない存在になっていますが、今回はまず通所サービスのメリットについてまとめてみます。
▽本人にとって
・定期的に家の外に出て施設で過ごすことになるので、外出準備から始まって施設での生活活動やアクティビティー、体操などをしたりして、日中家で過ごすよりも起きて身体を動かす機会が確実に増えることになり、心身機能の維持・向上に繋がるとともに生活リズムが整いやすくなる
・スタッフや他の利用者さんなど多くの人と交流できるようになって、社会性が保たれ脳が活性化される
・日々の体調管理（便通の有無）や症状の変化を客観的に観察してもらえるようになる
・少なくとも１回は栄養管理された食事が摂れる
・内服管理してもらえる
▽家族にとって
・本人が家にいない時間が確保できることで、家族の自由な時間ができたり、入浴や排泄といった介護負担の大きいケアをお願いできるため、家族の介護負担やストレスが軽減できる
・患者さんに多くの人が関わることになるので、家族にとっては具体的なアドバイスを受けたり、いつでも相談できるような窓口ができる
・家族が今後のショートステイ利用や、将来的な施設入所についても選択肢の１つとして考えられるようになる
▽その他
・不適切なケアをする家族から本人を離す時間が確保できる
・家族に余裕ができることで本人へのケアの改善が期待できる
・医師の処方通りに薬を内服させてもらえる
・客観的な体調や症状の経過を把握しやすくなる
このように通所サービスを利用することによって、本人と家族が受けられるメリットはたくさんあるのです。
認知症患者さんが抱えている課題は大体共通しており、通所サービスの導入で解決を目指せる
認知症治療を進めていくにあたり、患者さんには生活の中で改めていってほしい課題があるということがほとんどです。
ただ、認知症患者さんが抱えている課題というのは、大体決まったものであり、多くのケースで共通しているものになっています。
例えば、日中の活動性が心身共に乏しい、日中傾眠がちで夜は不眠傾向、一人暮らしや高齢夫婦２人暮らしで社会性の乏しい生活、便秘傾向、体調管理ができない、食事がしっかり摂れなかったり偏ったりしている、内服管理ができない、家族の介護負担やストレスが大きく余裕がない、介護のことで家族が相談できる窓口が少ない、家族が本人のことを自宅で最後まで世話をしていきたいと抱え込んでしまっている、家族から不適切なケアを受けている、自宅では薬をしっかり飲ませてもらえず家族の自己判断で調節されてしまっている、家族から体調や症状についての客観的な情報が得られにくいといったものです。
逆にいえば、このような課題を抱えている人は認知症になりやすいということにもなるでしょう。
そして、ここで挙げたような課題というのは、上記した通所サービスのメリットにもあるように、いずれも通所サービスを導入することで解決を目指せるものが多いのです。
したがって、認知症治療において通所サービスの導入が不可欠になっているというのは、このような理由があるからだと言えるのです。
次回に続きます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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