認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

2019-01-01から1年間の記事一覧

パーキンソン症状を生じさせる疾患や原因

前回まで「パーキンソン症状」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例を3ケースご紹介しました。 今回は「パーキンソン症状」を生じさせる疾患や原因について整理してみたいと思います。 「パーキンソン症状」は「パーキンソニズム」とも呼ばれます…

「パーキンソン症状」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その3)

前回に引き続き今回も「パーキンソン症状」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例についてお話しします。 3番目の症例は70代の男性で「めまい」を主訴に来院されました。 職業は理容師であり、現在も理髪店を経営されています。 「めまい」は10…

「パーキンソン症状」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その2)

前回に引き続き今回も「パーキンソン症状」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例についてお話しします。 2番目の症例は「ふらつき」と「もの忘れ」があることを心配して家族に連れて来られた70代の女性です。 屋外独歩は自立しているけれども、…

「パーキンソン症状」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その1)

前回はASD(自閉症スペクトラム障害)特性があると軽度のパーキンソン症状を合併しやすいというお話をしました。 今回は明らかなパーキンソン症状があるので各種画像検査を実施したけれども異常所見が認められず、実は神経変性疾患によってではなくASD…

ASD(自閉症スペクトラム障害)とパーキンソン症状

以前ご紹介した「認知症チェックリスト」の項目にもあるように、多くの認知症疾患で「パーキンソン症状」が合併します。 そのため認知症外来においては、軽微なパーキンソン症状であってもいかに見つけることができるかが非常に大事なのです。 そのため当院…

「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その3)

前回に引き続き今回も「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例についてお話しします。 3番目の症例は初診時40代後半の男性でやはり「もの忘れ」を主訴に受診されました。 妻と幼い子供2人と4人暮らしで、本人は金融関係の仕事をして…

「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その2)

前回に引き続き今回も「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例についてお話しします。 2番目の症例は初診時40代前半の女性でやはり「もの忘れ」を主訴に受診されました。 大学卒業後に一般企業にいったん就職するも退職して福祉系の大…

「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その1)

前回まで「もの忘れ」を生じさせやすい「発達障害」の症状についてお話ししましたが、分かりにくい面もあったかと思います。 そこで今回からは実際の症例をいくつかご紹介していこうと思います。 初めの症例は初診時20代前半の男性で「もの忘れ」を主訴に…

「もの忘れ」を生じさせやすい「発達障害」の症状(後)

前回は若年層や中壮年層の方が「もの忘れ」を主訴にして受診されてくる場合、ADHD(注意欠陥多動性障害)傾向があって「注意障害」をベースに持っていることが多く、また「もの忘れ」の出現の仕方も比較的「急に」というのが多くのケースで共通している…

「もの忘れ」を生じさせやすい「発達障害」の症状(前)

前回まで「もの忘れ」に間違われやすい「認知症」症状として「失語」と「意識の変容」を挙げてお話ししました。 実は今回の内容も前回のテーマの中に含めてお話ししようと思いましたが、今回お話しする症状は「認知症」になってから出現するというより、どち…

「もの忘れ」に間違われやすい「認知症」症状(後)

前回は「もの忘れ」に間違われやすい「認知症」症状として「失語」を挙げてお話ししました。 今回はその続きです。 次に「もの忘れ」に間違われやすい症状として挙げられるのが「意識の変容」です。 「意識の変容」とは「意識がはっきりしている時とそうでな…

「もの忘れ」に間違われやすい「認知症」症状(前)

「認知症」になると確かに「もの忘れ」症状が合併することが多いですが、もちろん「もの忘れ」イコール「認知症」という訳ではありません。 「認知症チェックリスト」でもご紹介した通り、「認知症」になると実に様々な症状が現れます。 それにも関わらず「…

【認知症チェックリスト】のまとめと使い方

前回まで「もの忘れ症状は除いて認知症になると出現しやすい症状」リストの10項目について1つずつお話ししてきました。 もちろんこの他にも症状はたくさんありますが、このリストに挙げた症状は特に認知症になると合併しやすい典型的な症状になります。 …

➉幻覚(幻視・幻聴・実体意識性など)や妄想がある【認知症チェックリスト】(後)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状➉の「幻覚」について主にお話ししました。 今回はその続きです。 ************************************************************************************************** ⑩幻覚(幻視・幻聴・実体意…

➉幻覚(幻視・幻聴・実体意識性など)や妄想がある【認知症チェックリスト】(前)

前回までは、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状リストの説明からは一旦離れて「発達障害傾向の強い方に特徴的な診療経過」についてお話ししました。 今回からまた症状リストの説明に戻ります。 今回はチェックリストの最後の項目「➉幻覚(幻視…

発達障害傾向の強い方に特徴的な診療経過(後)

前回は、「認知症」治療のためには介護している家族の対応も大事で、本人の感情をいかに穏やかにさせられるかがとても大切になるけれでも、その場に応じて患者さん第一に自分の言動を理性的にコントロールするのが困難な家族も少なくないということをお話し…

発達障害傾向の強い方に特徴的な診療経過(中)

前回は「認知症」の投薬治療を受けている本人や介護している家族で「発達障害」傾向が強かったりすると、その時その時の症状に振り回されて処方薬を自己判断で勝手に調節してしまうことも多く、そうすると薬の効果を適切に評価できなくなるばかりか、「認知…

発達障害傾向の強い方に特徴的な診療経過(前)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑨「焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)」についてお話ししました。 認知症外来を受診される方の多くがもともと「発達障害」の特性を持ち合わせているということについ…

⑨焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)【認知症チェックリスト】(後)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑨の「うつ症状」と「アパシー」についてお話ししました。 今回はその続きです。 ************************************************************************************************** ⑨焦燥感・不…

⑨焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)【認知症チェックリスト】(前)

前回までは、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑧の「原因不明の手足の痛み・しびれ・違和感・むくみがある(特に左右差がある)」についてお話ししました。 今回は「⑨焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)」につい…

⑧原因不明の手足の痛み・しびれ・違和感・むくみがある(特に左右差がある)【認知症チェックリスト】

前々回と前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状リストの説明からは一旦離れて「前頭葉症状と発達障害」についてお話ししました。 今回からまた症状リストの説明に戻ります。 今回は「⑧原因不明の手足の痛み・しびれ・違和感・むくみがある…

前頭葉症状と発達障害(後)

前回は、当院で「認知症」と診断される方は、元々ASD(自閉症スペクトラム障害)傾向やADHD(注意欠陥多動性障害)傾向、またはASDとADHD両者の傾向を併せ持っていて何かしらの「前頭葉症状」を呈していた方がとても多いこと、そしてそこに「…

前頭葉症状と発達障害(前)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑦の「前頭葉症状」についてお話ししました。 お気づきの方もいるかと思いますが、実はこの「前頭葉症状」は「発達障害の症状」にとても似ています。 今回は、次の認知症チェックリストの項目の説明に…

⑦前頭葉症状がある【認知症チェックリスト】(後)

前回は、「前頭葉症状」の典型的なものとして「無関心・自発性の低下」「感情・情動の希薄化とコントロール困難」「繰り返し行動(常同行動・時刻表的行動)」についてお話ししました。 今回はその続きです。 *********************************************…

⑦前頭葉症状がある【認知症チェックリスト】(前)

前回までは、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑥の「自律神経障害がある」についてお話ししました。 今回からは「⑦前頭葉症状がある」についてお話しいたします。 *************************************************************************…

⑥自律神経障害がある【認知症チェックリスト】(後)

前回は、認知症になると自律神経障害を発症しやすく、その中でも「便秘」が高頻度で合併することや、パーキンソン病やレビー小体型認知症では明らかな「パーキンソニズム」が現れる何年も前から「便秘」症状が先行して出てくることがあること、「便秘」があ…

⑥自律神経障害がある【認知症チェックリスト】(前)

前回までは、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑤の「睡眠障害(レム睡眠行動異常・睡眠時無呼吸症候群)がある」についてお話ししました。 今回からは「⑥自律神経障害がある」についてお話しいたします。 ************************************…

⑤睡眠障害(レム睡眠行動異常・睡眠時無呼吸症候群)がある【認知症チェックリスト】(後)

前回は、十分な睡眠がとれないと睡眠中に排泄されるはずの「アミロイドβ」が脳に溜まって認知症を発症しやすくなること、睡眠障害の1つである「レム睡眠行動障害」は様々な認知症を呈する神経変性疾患の前駆症状として数年~15年位前から現れること、「レ…

⑤睡眠障害(レム睡眠行動異常・睡眠時無呼吸症候群)がある【認知症チェックリスト】(前)

前回までは、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状④の「言葉の理解や発語がスムースでなかったり(失語)、人の顔や名所などが分からない(視覚性失認)」についてお話ししました。 今回からは「⑤睡眠障害(レム睡眠行動異常・睡眠時無呼吸症候群…

④言葉の理解や発語がスムースでなかったり(失語)、人の顔や名所などが分からない(視覚性失認)【認知症チェックリスト】(後)

前回は「④言葉の理解や発語がスムースでなかったり(失語)、人の顔や名所などが分からない(視覚性失認)」の「失語」についてお話ししました。 今回は後半の「視覚性失認」と、これらの症状が出やすい疾患についてお話しいたします。 ********************…