⑨焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)【認知症チェックリスト】(前)
前回までは、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑧の「原因不明の手足の痛み・しびれ・違和感・むくみがある(特に左右差がある)」についてお話ししました。
今回は「⑨焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)」についてお話しします。
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⑨焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)
・焦燥感や不安感、気分の落ち込み、うつ症状がある
・何もやる気が起きない
・引きこもりがちになり、無気力で寝てばかりいる(アパシー)
・疲れやすい。だるい
・うつや不安症などで精神科への通院歴がある
・精神科や心療内科で治療を受けても改善しない。かえって悪くなった
・ドクターショッピングの傾向がある
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「うつ」症状や「アパシー(apathy)」は認知症の前駆症状や初発症状として現れるとともに、その経過中にもしばしば現れる症状になります。
まず「うつ」症状についてですが、これは認知症だけでなくもちろん「うつ病」でも現れるものです。
「うつ病」とは「気分が落ち込んでやる気がなくなってしまうといった『うつ』症状のために、それまで出来ていたこと仕事や家事などが普段通りに出来なくなって、日常生活に支障をきたしている状態」のことを言います。
また「認知症」とは「脳の変性疾患や脳血管障害によって、記憶や思考などの認知機能の低下が起こり、6か月以上に渡って日常生活に支障をきたしている状態」のことを言いますので、「うつ病」も「認知症」も「日常生活に支障をきたしている」というのは同じですが、その原因が「認知機能の低下」によるものなのか「うつ」症状によるものなのかの違いしかありません。
そのためしっかり原因を鑑別してどちらなのか「診断」を受けることが大事になるのですが、「うつ病」の方が高齢化すれば「認知症」になることがありますし、「認知症」の方が「うつ病」にかかることもあるため、「認知症」と「うつ病」が合併することも少なくないのです。
脳血管障害など急激に起こるものを除き、神経変性疾患によって「認知症」が起こってくる場合は、徐々に「認知機能の低下」が進行するため、本人が「もの忘れ」などの自分の身体の「異変」を察知し、そのために不安感や焦燥感がつのって情緒不安定になったり、気分が落ち込んだりすることが少なくありません。
また集中力や注意力が持続しにくくなることで、注意があちこちに飛んでしまって自分の考えをまとめられずに「堂々巡り」してしまい、そのために不安感や焦燥感が助長されて気分が落ち込んでしまうこともあります。
そのため自分の身体の「異変」を察知できたり、「病識」が保たれていることが多い「認知症への移行期」や「認知症初期~早期」に「うつ」症状が出現しやすいのです。
ちなみに「認知症」が進行して自分の身体に対する関心がなくなったり「病識」がなくなってしまうと、「悩む」こともなくなるので不安になることもなくなり、自然に「うつ」症状も消えて行ったりしますが、その場合はまた別の症状が前景化してくることが多いようです。
次は「アパシー」についてです。
「認知症」になると身の回りのことへの関心が薄れてしまったり、入浴したり着替えたりといったことも行う気力がなくなってしまうことがあります。
このような「無気力・無関心」の状態を「アパシー」と呼びます。
「アパシー」は、パーキンソン病関連疾患、脳血管障害などの後遺症、甲状腺機能障害などのホルモン異常、薬剤の副作用などで起きることが知られており、それらが原因で起こる「認知症」の前駆症状や初期症状にもなっています。
高齢者の方が「アパシー」になると、それまでできていた生活習慣が乱れ、あらゆる面において「無精」が目立つようになります。
例えば、買い物や散歩などでいつも外出していた人が急に引きこもりになったり、美容室や床屋にあまり行かなくなったり、入浴や歯みがき、着替えなどもしたがらなくなります。
また「アパシー」は、徘徊や暴言・暴力といった目立つ「陽性症状」とは反対の「陰性症状」に含まれる「認知症」症状であり、本人は心身ともに引きこもって動かなくなるため、症状が目立たず周りの人からは気づかれにくい傾向があります。
独居や高齢者夫婦世帯の場合、久々に家を訪れてみたら、それまでは掃除が行き届いて整理整頓もされていたのに、トイレが汚れていたり、部屋中ホコリだらけで服が散乱していたりするので、それで初めて周りの人が「異変」に気づくということも少なくありません。
「うつ」と「アパシー」の違いについてですが、「うつ」でも外面的には意欲が低下して無気力に見えるようことがあります。
ただ「うつ」の場合は、気分が落ち込んで悲しいというような沈んだような感情を伴うのに対し、「アパシー」では意欲的になることもなければ、気分が落ち込むようなこともなく、何事にも対しても無気力・無関心で感情の変化を伴いません。
そのため本人は「何もする気が起きない」「辛くもなく、何とも思わないからこのままでいい」と思っていて全く困っていないけれども、周りにいる家族などが心配したり困ってしまうというのが「アパシー」の特徴であるとも言えます。
長くなりましたので、次回に続きます。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
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