認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

食事で効率良く栄養を摂るためには②

前回は、食べた物が自分の身になるためには、

①消化できているか?

②腸で吸収できているか?

③吸収した栄養素を運べているか?

④届けられた栄養素を使えているか?

少なくともこれらをクリアしなければならないので、単純に身体に必要な栄養素を含む食品を食べれば、すぐにその栄養素を補うことができる訳ではないというお話をしました。

 

身体を作る原料になる大事な栄養素で特に高齢者に不足しやすいのが「タンパク質」になりますが、この「タンパク質」を補うために肉や魚をたくさん食べたとします。

「タンパク質」はまず胃で分泌される「胃酸」と「ペプシン」の酵素作用によって消化・分解が始まります。

そもそも「タンパク質」は「アミノ酸」が数珠状につながり、らせん状や折り畳まれたような立体構造をしているのですが、それが強い酸性である「胃酸」と混ざリ合うことでまず「タンパク質」の立体構造が崩され、酸性状態で最も良く働く消化酵素ペプシンの作用によって「オリゴペプチド」へ分解されます。

次に十二指腸へ送られた「オリゴペプチド」は膵臓から出る「膵液」と混ざり合うのですが、「膵液」はアルカリ性である重曹を含んでいるので「胃酸」で酸性化された「タンパク質」を中和します。

「膵液」にはトリプシン、キモトリプシンなどの消化酵素が含まれ、これらの中性下で強力に働く消化酵素が「オリゴペプチド」を「ペプチド」へ分解します。

さらに「ペプチド」は小腸へ送られながら「腸液」に含まれるアミノペプチダーゼの作用を受け、空腸に着く頃にはほとんどが「アミノ酸」にまで分解されて速やかに小腸上皮粘膜から吸収されます。

 

このように「タンパク質」は様々な消化酵素の作用で最小単位の「アミノ酸」にまでしっかり分解されることで、初めて小腸で身体に吸収されることになります。

「タンパク質」と「糖質」を比べると、「糖質」は口に入った時点で唾液中のアミラーゼによる分解が始まりますが、「タンパク質」は胃に入るまで分解が始まらないという特徴もあります。

そのため「タンパク質」の消化・吸収のためには、まずは胃で十分に「胃酸」が分泌されることがとても大事になるのですが、日本人は欧米人に比べて「胃酸」の分泌が不足しがちな傾向があり、「タンパク質」をしっかり「アミノ酸」まで分解するのが苦手だという方が多いのだそうです。

また連日の厳しい暑さといった天候や気圧の変化、日頃のストレスなどによって消化器の働きが鈍り、「胃酸」の分泌がさらに減るということもあります。

 

お腹がすぐにいっぱいになる、特に肉や油ものを食べるともたれやすい、膨満感がある、げっぷが多い、消化に時間がかかるなどの症状がある方は「胃酸」不足の疑いがあります。

それを確かめる方法としては水で薄めたレモンやお酢クエン酸を食事中にこまめに摂取し、食後2~3時間後にいつもより胃がスッキリする方は「胃酸不足」、逆にムカムカしたり不快感が出る方は「胃酸過多」の傾向があるそうです。

「胃酸不足」への対策としては、食前や食間にレモンや梅干し、お酢などの酸味のあるものを食事に取り入れることはもちろん、「胃酸」を薄めてしまわないように食事中の水分摂取は控えること、消化を助ける大根おろしや山芋などを生で食べること、消化しやすいように肉などは塊でなく細かくして食べる・1回の量を少なめにする・良く噛む(一口30回以上)ことなどが挙げられます。

 

また、肉が苦手であまり食べないという方は、肉を食べないことで肉の消化酵素が減ってしまい、ますます肉が食べられないといった悪循環に陥っている可能性もあるそうです。

そもそも「タンパク質」の消化酵素の原料になるのが「タンパク質」なので、身体が「タンパク質不足」になると消化酵素がうまく働かなくなり、せっかく摂った栄養素やビタミン、ミネラルの吸収も阻害されてしまうからです。

また今のような暑い時期に食欲があまりなく、食事の準備も簡単だからということでそうめんやうどん、パスタなどの麺類、パン、ごはんに漬物・ふりかけだけといったような物ばかり食べている方も要注意です。

せっかく食べた物をしっかり消化して吸収する胃腸力を保つためにも消化酵素の原料である「タンパク質」をこまめに、確実に食べていくことが大切なのです。

そして消化が活発に行われて栄養の吸収もスムースになれば、身体に疲れが残ることも当然少なくなります。

 

長くなりましたので、次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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