認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

「リーキーガット」を予防・改善するには?⑪

前回までに「リーキーガット」を予防・改善するための対策として⑤腸粘膜の保護と修復に直接的に作用する物質を摂ることを挙げ、腸粘膜の保護と修復が期待できる栄養因子(抗酸化物質腸粘膜の栄養素消化酵素乳酸菌やビフィズス菌などの菌体成分食物繊維)のうち、前回は腸粘膜の栄養素としてグルタミンについてお話ししました。

今回はその続きです。

 

・腸粘膜の栄養素

c.ビタミンA

ビタミンAとは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、脂溶性ビタミンに分類されます。

また植物に含まれるβカロテンは、摂取後に小腸上皮細胞にてビタミンAに変換されるので、プロビタミンA(ビタミンA前駆体)と呼ばれ、ビタミンAの仲間とされています。

ただβカロテンはすべてがビタミンAに変換される訳ではなく、吸収効率や変換率を考慮すると、βカロテンによる作用はレチノールの1/6程度になるそうです。

 

ビタミンAの主要成分であるレチノールには目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあるとともに、視細胞での光刺激反応に関与するため薄暗いところで視力を保つ働きもしています。

そのためビタミンAが不足すると角膜や結膜上皮を含む皮膚や粘膜が乾燥・肥厚・角質化したり、薄暗いところで物が見えにくくなる夜盲症になったりします。

 

また同じくビタミンAの成分であるレチノイン酸は、特に腸粘膜の炎症や、腸内フローラのバランスを改善させたり、「腸管免疫」において病原細菌と直接戦うIgA抗体(免疫グロブリン)の産生誘導に関与していることが知られています。

ちなみに腸管は主に食物を消化吸収する働きをしていますが、病原細菌の多くも口から入り、腸管を通じて体内へ侵入しようとするため免疫器官としても重要な役割を果たしており、特に「腸管免疫」と呼ばれます。

そのため腸管には病原細菌などの侵入者から身を守る自己防衛体制として、体内において最大の規模の免疫器官が配置されており、免疫細胞や抗体の60%以上が集中しています。

特に腸管壁に局在するパイエル板は重要な免疫器官であり、バイエル板表層のM細胞から病原細菌が取り込まれると、内在する樹状細胞、T細胞、B細胞などの主要な免疫細胞が協力して侵入してきた病原細菌抗原に対するIgA抗体を産生し、病原細菌が腸管壁を超えて体内への侵入するのを防ぎます。

この腸管免疫の発達や働きを維持するために腸内細菌が重要な役割を果していることも最近分かってきました。

このようにレチノイン酸には腸内免疫を通じて免疫機能に働きかけ、感染リスクの減少や炎症の抑制、抗アレルギー効果なども期待できるとされています。

 

このような有益な成分を含むビタミンAの摂取量についてですが、厚生労働省発表の日本人の食事摂取基準(2015年版)によると一日当たりのビタミンAの推奨量は成人男性で800~900ugRAE、成人女性で650~700ugRAEとされています。

ビタミンAが多く含まれる食品としては、豚・鶏レバー、うなぎなどがあります。

ただ注意が必要なのは、脂溶性ビタミンであるため体内に蓄積しやすく、先ほどの食事摂取基準では上限値が定められていることです。

ビタミンAが過剰になると頭痛が出たり、急性症状として脳脊髄液圧の上昇、慢性症状として頭蓋内圧亢進症や皮膚のはげ落ち、口唇炎、脱毛症、食欲不振、筋肉痛などが出たりします。

このビタミンAの過剰は通常の食事ではほとんど起こりませんが、サプリメントを利用したり、ビタミンAを特に多く含むレバーを過剰に食べたりする時には注意が必要です。

ちなみにβカロテンからのビタミンAへの変換は必要に応じて厳密に調節されているため、βカロテン摂取によるビタミンAの過剰は起こらないので安心です。

βカロテンを多く含む食品としてはのりやしそ、にんじん、かぼちゃなどの緑黄色野菜があります。

前回もお話ししましたが、どんなに良い成分であってもそればっかりを摂るというのはかえって健康を損ないかねず、やはり幅広い食品から「バランス良く」栄養素を摂取することが大切なのだと思います。

 

長くなりましたので、次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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