認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

免疫力を強化して新型コロナと向き合おう(3)

前回は、病原体が変異し続けている可能性が高い新型コロナウイルスに対して、病原体を特定してその「抗体」の産生を促す従来のワクチンが有効なのかについては、まだ明らかになっていないというお話をしました。

今回はその続きになります。

 

BCGワクチンは「自然免疫」を高める可能性がある

病原体を特定してその「抗体」の産生を促す基本的なワクチンの有効性についてはまだ明らかになっていません。

ただBCGワクチンは新型コロナウイルス感染症に効果があるのではないかということが、様々なメディアで報じられています。

新型コロナウイルスによる感染者数と死亡率が比較的低く抑えられている国では、現在も広範なBCGワクチン接種を行っているところが多いからです。

そもそもBCGは結核に対するワクチンですが、同時に強く「自然免疫」を強化するアジュバンド(免疫強化物質)としても知られています。

そのため、先述した通り基本的なワクチンが「獲得免疫」に作用して特定の病原体に対する免疫を強化するのに対し、BCGワクチンは「自然免疫」を強化する作用が大きいというのです。

「自然免疫」を担う「樹状細胞」には、BCGを受け入れて認識するTLR(Toll-like receptor;TLR2、TLR4)という受容体がたくさんあります。

BCGにはこのTLRを通じて「樹状細胞」のスイッチを入れ、活性化させる性質があるのです。

「樹状細胞」が活性化されると「自然免疫」が強化され、さらには「獲得免疫」も効率良く機能するようになるので、免疫システム全体が強化されるのです。

 

BCG日本株に含まれる生菌数が一番多い

BCGワクチンには色々な株があり、各国での使用状況も様々です。

BCG株の主なものには、日本株、フランス株、デンマーク株、グラクソ株、ソ連株、モロー株などがありますが、日本株ソ連株を使用している国においては特に感染者数と死亡率が低く抑えられているようなのです。

それぞれのBCG株中に含まれる感作能力(結核に対して免疫を誘導する力)と生菌数を比較すると、日本株ソ連株は他の株に比べて結核菌に対する免疫応答誘導能力は他の株とは大きく変わりませんが、含まれる生菌数が著しく高いそうです。

ワクチンに含まれる生菌数が多いということは、これらの株中の菌が免疫刺激物質を含んでいるのであれば、生菌数が多いほど免疫刺激能力が高くなるということです。

ちなみにBCG日本株はすべてのBCG株の中で一番生菌数が多く、ソ連株に比べても約2倍の生菌数を含んでいます。

つまりBCG日本株には「自然免疫」を高める効果を一番期待できるということになります。

 

「自然免疫」を活性化させるのはBCGワクチンだけではない

ただ今回お話ししたかったのは、新型コロナウイルスに対してBCGワクチンの効果が期待できるということだけではありません。

TLRを通じて「自然免疫」を担う「樹状細胞」を活性化させてくれるのは、何もBCGワクチンだけに限らないのです。

実は、身近にある食品成分の中にも同じような働きを期待できるものがいくつもあり、そのことを是非お伝えしたかったのです。

それでは以下に「樹状細胞」のスイッチを入れて「自然免疫」を強化してくれる物質とそれらを含む食品について挙げてみます。

・乳酸菌:乳製品や漬物、味噌・醤油などに含まれる。

酪酸菌:ぬか漬けなどに含まれる。

β-グルカン:大麦やオーツ麦、全粒穀物(全粒小麦・ふすま、玄米・糠)、キノコ類などに含まれる。

・フコダイン:昆布やワカメ(メカブ)、モズクなどの海藻類に含まれる(ネバネバ成分)。

・非病原性リポ多糖(LPS):野菜や穀物の皮の部分に多く、全粒穀物(全粒小麦・ふすま、玄米・糠)や漢方薬などに含まれる。

・ビタミンD:日光浴によって体内に産生される。魚類(サケ、サンマ、イワシなど)やキノコ類(キクラゲ、干し椎茸など)、卵黄、さつま揚げなどに含まれる。

これらを見ると、やはり昔ながらの日本食が「自然免疫」を強化するには優れていると思わざるを得ません。

食事は玄米を主食にして味噌汁とぬか漬けをつけ、魚やキノコ類、海藻類をおかずにうまく取り入れるようにしながら、さらには日常的に日光を浴びる習慣を作ることができれば、「自然免疫」が強化されて新型コロナウイルスに対しても強い身体になれるのではないでしょうか。

 

行き着くところは「自然免疫」を強化する生活習慣

その効果は新型コロナウイルスの感染・重症化予防だけに留まりません。

「自然免疫」を高めることは、身体に炎症を引き起こすあらゆる疾患に対してもその効果が期待できるのです。

それはアレルギーをはじめとする様々な自己免疫疾患や癌はもちろん、認知症疾患も例外ではありません。

認知症新型コロナウイルスも、予防したり重症化させないような健康法や生活習慣を突き詰めていくと、行き着くところはやはり同じなんだということが分かりました。

つまり「自然免疫」を高めるような生活習慣を持つことこそが、健康への近道なのではないかということです。

新型コロナウイルスによって今、世界中の人が多大な損害を被り、不自由な生活を強いられています。

同時に新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにして、みんなの健康に対する意識が今までになく高まっているような気がします。

どうせならこれを機に、新型コロナウイルス対策につながる生活習慣を徹底的に心掛けて、みんなでもっともっと健康になってしまいませんか。

 

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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