認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(6)

前回は、新型コロナウイルスは細胞の表面にある「ACE2(アンギオテンシン転換酵素)」に結びつくことで人間に感染するが、それによって「ACE2」が機能不全になると、免疫を調節する「レニン-アンジオテンシン系」をうまくコントロールできなくなるために、免疫が「暴走」して「サイトカインストーム」が起こりやすくなるということをお話ししました。

そして、実はビタミンDには「ACE2」の代わりに「レニン-アンジオテンシン系」をコントロールして病態を一気に重症化させる「サイトカインストーム」を低減させる可能性があることをお伝えしました。

今回はその続きになります。

 

ビタミンDを体内に増やして免疫力を高めよう

これまでお話ししてきたように、やはりビタミンDには新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ可能性があるのではないかと思われます。

実際、今回ご紹介した論文のほかにも、ビタミンDを充足させることで新型コロナウイルス感染症の重症化が防げる可能性があることを示す研究報告が各国から相次いでいるという現状があります。

また、ビタミンDにそのような効果が期待できる理由として、ビタミンDが「自然免疫」を活性化させるとともに免疫過剰を抑える「制御性T細胞」も活性化させたり、新型コロナウイルスが結びついて機能不全になった「ACE2」の代わりに「レニン-アンジオテンシン系」をコントロールすることで、免疫過剰による「サイトカインストーム」を低減する可能性があること、さらにビタミンDはカテリシジンやディフェンシンといった細菌感染症のリスクやウイルスの生存率・複製速度を下げる「抗菌ペプチド」を増やして「自然免疫」を高める可能性があることについては、お話ししてきた通りです。

このようにビタミンDには、私たちの免疫力を高め整えてくれる作用が期待できるのです。

そして免疫力を高めることは、新型コロナウイルス感染症に限らずあらゆる病気の予防や治療回復にも繋がることだと思われます。

そうであるならば是非とも体内にビタミンDを増やしていきたいところです。

ではここからは、どのようにしたら体内にビタミンDを増やすことができるのかについてお話ししていこうと思います。

 

体内にビタミンDを増やす3つの方法

体内のビタミンDを増やす方法としては、次の3つが挙げられます。

・日光浴をする

・食事から摂る

・ビタミンDのサプリメントを使う

3つの方法については順次ご紹介していきますが、これらを理解しやすくするために、ひとまずここでビタミンDの特徴について簡単に整理しておこうと思います。

 

ビタミンDはビタミンとホルモンの両方の性質を持つ

そもそもビタミンとは、人体の機能を正常に保つために必要な有機化合物のことで、体内ではほとんど生成することができないため、食物から摂取する必要があるものとされています。

しかしビタミンDは例外で、日光の紫外線を浴びることで体内で生成できるという特徴があります。

そのためビタミンDは、ビタミンというよりは体内で生成できるホルモン(神経伝達物質)に近いとも言えるのですが、日光が弱い季節や地域によっては体内での生成が難しくなり、食物から摂取するしかなくなるためビタミンに分類されているようです。

したがって十分な日光浴ができるという条件付きではありますが、ビタミンDはビタミンとホルモンの両方の性質を持ち合わせている特殊なビタミンだと言えます。

 

ビタミンDの働きは多岐にわたっている

体内におけるビタミンDの主な働きはカルシウム代謝の調節になります。

ビタミンDは、小腸からのカルシウムの吸収を促進するとともに、腎臓から尿への排出を抑制したり、骨から血中へのカルシウムの放出を促進したりして、血中のカルシウム濃度を高める働きをしています。

そのためビタミンDは骨の形成にとって欠かせない働きをしているのですが、「骨を丈夫にするにはよく日光に当たりなさい」と言われるのは、日光浴によってビタミンDの生成が促されるからです。

しかしビタミンDが関与しているのはカルシウムの代謝だけはありません。

細胞の増殖や死、発がん、そして今回お話ししてきたような生体を防御するための炎症や免疫など、多岐にわたって生体機能の調節に関与しているのです。

 

日本人の多くがビタミンD不足!?

このように体内で多くの役割を果たしているビタミンDですが、実は2016年に報告されたMiyamotoらによる「39~64歳の411名の女性医療従事者を対象にした調査」によると、血中ビタミンD濃度が正常(25(OH)D>30ng/ml=75nmol/ml)だったのは21.0~27.7%に過ぎず、70%以上の人がビタミンD不足・欠乏状態であり、その傾向は若年層の方が強かったそうです。

また、2015年に報告された中村らによる「日本人成人9084名におけるビタミンD充足に対する基本属性、環境、生活習慣の影響」を調べた研究によると、ビタミンD充足者の割合は、「充足」の定義を25(OH)Dが20ng/ml(=50nmol/ml)以上にした場合は46.4%、30ng/ml(=75nmol/ml)以上にした場合は9.1%と低く、特に女性と若年者でビタミンDが不十分だったそうです。

さらに2018年に報告されたAndoらによる「日本人3歳児において25(OH)Dレベルは強い季節性を示したが、ビタミンD摂取との関連性は認められなかった」によると、3歳児574人を調べたところ約30%にあたる170人で25(OH)Dが20ng/ml(=50nmol/ml)未満の不十分な状態であり、さらに25(OH)DはビタミンDを豊富に含む魚の摂取量ではなく、紫外線を浴びる屋外での行動時間と有意に相関していたそうです。

免疫力の強化をはじめ様々な効果を期待できるビタミンDですが、これらの報告からどうも日本人ではビタミンDが不足している人が少なくなく、特に女性と若年者においてその傾向が強いようです。

逆に言えば、ビタミンDを充足すれば免疫力を強化できる人が非常に多い、ということになるのではないでしょうか。

 

次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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