認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(8)

前回は、血中ビタミンDの基準値とあらゆる疾患の予防につながる目指すべき最適値をお示ししたうえで、体内にビタミンDを増やす方法として、まず日光浴をすることを挙げました。

ビタミンDは紫外線B波が皮膚に当たることで生成されますが、体内のビタミンD量の約8割が皮膚由来とも言われているので、ビタミンDを充足させるには日光浴が不可欠であることをお話し、また実際に日光浴をしていくにあたっては、安全な範囲で日光浴をしても良い時間の目安を教えてくれる便利なサイトがあることをご紹介しました。

今回はその続きになります。

 

体内にビタミンDを増やすためには

(2)食事から摂る

ビタミンDの1日の摂取推奨量は

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、ビタミンD欠乏にならないための1日当たりのビタミンD摂取目安量として、成人も高齢者も8.5μg(=340IU;1μg=40IU)、上限100μg(=4000IU)を推奨しています。

この推奨目安量は、アメリカ・カナダの食事摂取基準(2011年)で推奨された1日当たりの目安量、成人15μg(=600IU)、71歳以上20μg(=800IU)に準拠し、そこから日照により皮膚で産生されると考えられる最低量5.5μg(=220IU)を差し引いたりして調整した量になっています。

つまり厚労省の推奨する1日当たりのビタミンD摂取量は、一定時間日光浴をすることを前提にした目安量なのです。

さらに、血中ビタミンD濃度を示す25(OH)Dの基準値は、充足状態が30ng/ml以上、不足状態が20~30ng/ml、欠乏状態が20ng/ml未満とされて、国内外の見解はほぼ一致していますが、2013年に報告されたN.Yoshimuraらによる研究によると、25(OH)Dが30ng/ml未満のビタミンD不足~欠乏者の日本人の割合は男性が72.5%、女性が88.0%にも達することから、厚労省は不足状態とされる30ng/ml未満ではなく、欠乏状態とされる20ng/ml未満を食事摂取基準の参照値として採用したという背景があります。

これらのことから厚労省が推奨する1日当たりのビタミンD摂取目安量8.5μg(=340IU)以上というのは、体内のビタミンDを充足するための摂取量としては少なすぎる可能性が高いのです。

 

ビタミンDが豊富な食品は

ビタミンDが豊富な食品には魚類やきのこ類、卵などがあります。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)」に基づいて、ビタミンDが多い食品を含有量と共にいくつかご紹介しますと、紅鮭1切(80g)25.6μg(=1024IU)、さんま1尾(100g)15.7μg(=628IU)、かれい小1尾(100g)13.0μg(=520IU)、ぶり1切(80g)6.4μg(=256IU)、さば水煮1缶(正味120g)13.2μg(=528IU)、塩サバ1切(60g)6.6μg(=264IU)、しらす干し半乾燥大さじ2(10g)6.1μg(=244IU)、しらす干し微乾燥大さじ2(10g)1.2μg(=40IU)、干しきくらげ1個(1g)0.9μg(=34IU)、干ししいたけ1個(3g)0.4μg(=15IU)、全卵Mサイズ1個(50g)0.9μg(=36IU)などがありますので、ご参考にしていただければと思います。

またビタミンDは油脂に溶けやすい脂溶性のため、魚油が豊富な魚類の方が吸収されやすい性質がありますが、きのこ類は炒め物や揚げ物など、油を使った料理にすれば吸収率がアップするようです。

ビタミンDの含有量が多い食品は決して多くはありませんが、これらの食品を意識的に摂取することを習慣化していけば、一定の割合でビタミンDを補給していくことは可能だと思われます。

 

食事だけで体内のビタミンDを充足させるのは難しい!?

ただ2016 年に行われた国民健康・栄養調査(1 日間食事記録法による)によると、30~69歳の成人におけるビタミンD摂取量の中央値は、2.5~4.8μg(=100~192IU)に過ぎなかったそうです。

これは決して充分とはいえない厚労省が推奨する1日当たりのビタミンD摂取目安量8.5μg(=340IU)にも遠く及びません。

ビタミンDが多く含まれる食品は限られてることもあり、やはり意識的にそのような食品を食事に取り入れていかないと、なかなか摂取目安量に達するのは難しいのかもしれません。

さらに日に当たる機会が非常に乏しい日本人の施設入所高齢者に対する介入試験を行ったところ、血中ビタミンD濃度を示す25(OH)Dを欠乏状態でない20ng/ml以上にするためには、5μg(=200IU)/日では無効で、20μg(=800IU)/日でも20ng/mlを超えたのは約40% に過ぎなかったという報告があります。

これらのことから、やはり食事だけで体内のビタミンDを充足させていくのはなかなか難しいのかもしれません。

 

次回に続きます。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

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