認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

認知症と発達障害

「パーキンソン症状」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その1)

前回はASD(自閉症スペクトラム障害)特性があると軽度のパーキンソン症状を合併しやすいというお話をしました。 今回は明らかなパーキンソン症状があるので各種画像検査を実施したけれども異常所見が認められず、実は神経変性疾患によってではなくASD…

ASD(自閉症スペクトラム障害)とパーキンソン症状

以前ご紹介した「認知症チェックリスト」の項目にもあるように、多くの認知症疾患で「パーキンソン症状」が合併します。 そのため認知症外来においては、軽微なパーキンソン症状であってもいかに見つけることができるかが非常に大事なのです。 そのため当院…

「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その3)

前回に引き続き今回も「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例についてお話しします。 3番目の症例は初診時40代後半の男性でやはり「もの忘れ」を主訴に受診されました。 妻と幼い子供2人と4人暮らしで、本人は金融関係の仕事をして…

「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その2)

前回に引き続き今回も「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例についてお話しします。 2番目の症例は初診時40代前半の女性でやはり「もの忘れ」を主訴に受診されました。 大学卒業後に一般企業にいったん就職するも退職して福祉系の大…

「もの忘れ」を主訴に受診された「発達障害」傾向のある症例(その1)

前回まで「もの忘れ」を生じさせやすい「発達障害」の症状についてお話ししましたが、分かりにくい面もあったかと思います。 そこで今回からは実際の症例をいくつかご紹介していこうと思います。 初めの症例は初診時20代前半の男性で「もの忘れ」を主訴に…

「もの忘れ」を生じさせやすい「発達障害」の症状(後)

前回は若年層や中壮年層の方が「もの忘れ」を主訴にして受診されてくる場合、ADHD(注意欠陥多動性障害)傾向があって「注意障害」をベースに持っていることが多く、また「もの忘れ」の出現の仕方も比較的「急に」というのが多くのケースで共通している…

「もの忘れ」を生じさせやすい「発達障害」の症状(前)

前回まで「もの忘れ」に間違われやすい「認知症」症状として「失語」と「意識の変容」を挙げてお話ししました。 実は今回の内容も前回のテーマの中に含めてお話ししようと思いましたが、今回お話しする症状は「認知症」になってから出現するというより、どち…

発達障害傾向の強い方に特徴的な診療経過(後)

前回は、「認知症」治療のためには介護している家族の対応も大事で、本人の感情をいかに穏やかにさせられるかがとても大切になるけれでも、その場に応じて患者さん第一に自分の言動を理性的にコントロールするのが困難な家族も少なくないということをお話し…

発達障害傾向の強い方に特徴的な診療経過(中)

前回は「認知症」の投薬治療を受けている本人や介護している家族で「発達障害」傾向が強かったりすると、その時その時の症状に振り回されて処方薬を自己判断で勝手に調節してしまうことも多く、そうすると薬の効果を適切に評価できなくなるばかりか、「認知…

発達障害傾向の強い方に特徴的な診療経過(前)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑨「焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)」についてお話ししました。 認知症外来を受診される方の多くがもともと「発達障害」の特性を持ち合わせているということについ…

⑨焦燥感・不安感・うつ症状がある(ドクターショッピングをしている)【認知症チェックリスト】(後)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑨の「うつ症状」と「アパシー」についてお話ししました。 今回はその続きです。 ************************************************************************************************** ⑨焦燥感・不…

前頭葉症状と発達障害(後)

前回は、当院で「認知症」と診断される方は、元々ASD(自閉症スペクトラム障害)傾向やADHD(注意欠陥多動性障害)傾向、またはASDとADHD両者の傾向を併せ持っていて何かしらの「前頭葉症状」を呈していた方がとても多いこと、そしてそこに「…

前頭葉症状と発達障害(前)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状⑦の「前頭葉症状」についてお話ししました。 お気づきの方もいるかと思いますが、実はこの「前頭葉症状」は「発達障害の症状」にとても似ています。 今回は、次の認知症チェックリストの項目の説明に…

認知症と発達障害(後)

前回は、発達障害傾向のある方は鏡像運動が出やすいこと、発達障害の方が未診断のまま高齢になり認知症に移行していくケースが少なくないのではないかということ、自閉症スペクトラム障害(ASD)タイプと注意欠陥多動性障害(ADHD)タイプそれぞれの…

認知症と発達障害(前)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状①の項目後半にある「鏡像運動」についてご説明しました。 その中で、鏡像運動はパーキンソン病や大脳皮質基底核症候群といった変性疾患や脳梗塞後遺症などの一部の疾患群で認められるものであり、定…

①手の使いにくさがあり、明らかな鏡像運動が出る【認知症チェックリスト】(後)

前回は、もの忘れを除いて認知症になると出現しやすい症状①の項目前半にある「手の使いにくさ」についてご説明しました。 また「脳の可塑性」を活用すれば、年齢に関係なく認知機能を含めた身体全体の機能を維持・向上させることが十分可能であり、特に手や…