認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

認知症の診断

本当に「耳が遠い」だけですか?(7)

前回は、「意味性認知症」になると「失語」だけでなく「視覚性失認」も呈しやすいということをお話しし、当院で実施している「視覚性失認」の有無を確かめるテストをご紹介しました。 今回はその続きになります。 「意味性認知症」は「アルツハイマー型認知…

本当に「耳が遠い」だけですか?(6)

前回は、「失語」の具体的な症状についてお話しするとともに、「失語」症状は「意味性認知症」でなくても出現しやすいものであり、認知症患者さんが合併する症状としては決して珍しくないというお話をしました。 ただ、明らかな「記憶障害」を伴わずに病初期…

本当に「耳が遠い」だけですか?(5)

前回は、当院で実施している「失語症スクリーニングテスト」と失語症が疑われるよくある回答や反応についてご紹介しました。 また、認知症患者さんの多くが言葉の視覚的理解よりも聴覚的理解の方が障害されやすい傾向があることについてもお話ししました。 …

本当に「耳が遠い」だけですか?(4)

前回は、「失語」症状のある人は、言葉の意味が分からなくても、そのことを相手に悟られないように「聞こえないふりをする」「笑ってごまかす」「話をそらす」「急に不機嫌になって怒り出す」「その場からいなくなる」といったふるまいをすることがよくある…

本当に「耳が遠い」だけですか?(3)

前回は、「失語」があるといわゆる「都合耳」になりやすいということと、電話が苦手になりやすいということをお話ししました。 今回はその続きになります。 言葉の意味が分からなくても、本人はそれを隠すことが多い おそらく皆さんも誰かを話してる時に、相…

本当に「耳が遠い」だけですか?(2)

前回は、「意味性認知症」についてご紹介し、その主要な症状である「失語」症状が「難聴」と間違われやすいことと、「失語」症状は少しずつ進行していくために「意味性認知症」はある程度進行するまで、周りの人たちには気付かれにくいということをお話しし…

本当に「耳が遠い」だけですか?(1)

「意味性認知症」をご存じですか? 最近、当院ではなぜか「意味性認知症(Semantic Dementia:SD)」と診断される患者さんが多いのですが、皆さんは「意味性認知症」という病名を聞いたことがあるでしょうか? 「意味性認知症」は、我が国…

「目」に表れる認知症の徴候(5)

前回は、心の動きや頭の働きは「目」の動きと連動していることと、自閉症スペクトラム症の気質も「目」に表れることについてお話ししました。 今回はその続きになります。 眠っていても、まぶたごしに「目」が動いているのは脳が活動している証拠 前回までは…

「目」に表れる認知症の徴候(4)

前回は、「目」の動きが制限されたり、指などをしっかり追視できなくなるのも認知症を伴う神経変性疾患の症状であるというお話をしました。 今回はその続きになります。 心の動きや頭の働きは「目」の動きと連動している 心がきれいな子供の「目」はとても澄…

「目」に表れる認知症の徴候(3)

前回は「目」に表れるパーキンソン症状についてと、認知症になると「目」の動きが悪くなりやすいことについてお話ししました 今回はその続きになります。 「目」が上下に動きづらくなるのが進行性核上性麻痺 脳の神経障害によって眼球運動が障害される主要な…

「目」に表れる認知症の徴候(2)

前回は、認知症疾患で高頻度に合併する「意識の変容」が疑われる「目の表情」についてお話ししました。 今回はその続きになります。 「目」に表れるパーキンソン症状 当院を受診されるほとんどの認知症患者さんがパーキンソン症状を合併されています。 パー…

「目」に表れる認知症の徴候(1)

認知症があるかどうかは「目」からも気付ける 前回までの「まなざしによるケア」では、「まなざしには人を癒す大きな力が秘められている」というお話をしました。 また「目は口ほどに物をいう」というように、人は「目」という「心の窓」を通して「心の動き…

レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(2)

前回は、レビー小体型認知症では非常に多彩な認知症症状が出現するけれども、その中には他の認知症疾患でも認められるものが少なくないため、レビー小体型認知症の症状や治療について理解することは「認知症」全体を理解するうえで非常に役に立つというお話…

レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(1)

レビー小体型認知症は認知症症状の宝庫 前回は認知症で最も多いアルツハイマー型認知症の診断についてお話しました。 今回からアルツハイマー型認知症に次いで多いレビー小体型認知症についてお話ししていきますが、レビー小体型認知症で現れる認知症症状は…

最も多いアルツハイマー型認知症の診断について

総務省統計局によると2019年の65歳以上の高齢者人口は3588万人にのぼり、これは日本の全人口の28.4%にあたるそうです。 さらに高齢者白書によると2012年の認知症患者数が約460万人で高齢者人口の15%という割合だったのが、2025…