認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(17)

前回は、治療に難渋する患者さん家族には一定のパターンや傾向があり、大まかに「話が主観的でまとまりがない」タイプと「熱心で細かく要求が高い」タイプの2つに分けられことをお話ししました。 そして、それぞれのタイプの特徴や傾向についてご紹介し、そ…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(16)

前回は、認知症患者さんに新たに薬を始めたり投薬量を調節した場合には、様々な要因による日々の小さな変動を差し引いたうえで、全体的に症状が良くなったのか悪くなったのかを判断するために、最低でも1~2週間はそのままで様子をみたいということ、治療…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(15)

前回は、認知症治療においては投薬以外のケアによる効果も非常に大きいため、治療がうまくいくかどうかは、家族と医療従事者が同じ土俵に立って協力し合えるどうかが大きな分岐点になるというお話をしました。 そのため認知症治療においては家族の協力が不可…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(14)

認知症治療における投薬と家族によるケアについて強調しておきたかったこと ここまで数回にわたって、認知症の投薬治療について少し詳しくお話ししてきました。 そのため「『お父さん!違うでしょ!』といったような家族の対応が認知症患者さんの病状を進行…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(13)

前回は、精神症状と身体症状に対する薬の効果は完全に「シーソー関係」にあり、精神症状を良くする薬を使うと身体の動きが悪くなり、身体症状を良くする薬を使うと精神症状が悪くなる傾向があること、そして精神症状に対する投薬で最も出現頻度の高い副作用…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(12)

前回は、認知症患者さんの多くが有している「薬剤過敏性」こそが認知症治療の難易度を上げている主要な要因の一つであり、そのため投薬治療を安全に進めていく上では、予期せぬ薬の効果が出ていないかどうかを注意深く見極めながら、おかしな兆候があればす…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(11)

前回は、認知症医療の臨床において、家族が勝手に薬を調整してしまうケースは治療に最も難渋するが、そもそも自己判断で内服薬の調整をすることは「悪性症候群」という命に係わる状況を引き起こしかねず、非常に危険なので絶対にしてはいけないというお話を…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(10)

前回は、患者さんの客観的な症状と変化を報告できない家族の場合、家族の大げさな話にこちらが振り回されないようにしながら、できるだけ客観的な情報を引き出せるように問診するとともに、その他の家族やケアマネを初めとする医療・介護保険スタッフとも積…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(9)

前回は、認知症患者さんがデイサービスやデイケアなどの通所サービスを利用するようになると、生活リズムが整って夜間の睡眠の質が上がり、それによってほとんどの認知症症状のベースになっている「意識の変容」が改善するので、認知症症状も全体的に落ち着…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(8)

前回は、認知症患者さんと同居されている方が、どうしても本人の気持ちを落ち着かなくさせてしまうような言動をしており、それを改めるのがなかなか難しい場合、当院では本人にデイサービスやデイケアなどの通所サービスを利用してもらうようお勧めしている…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(7)

前回は、認知症患者さんと同居されている方が、どうしても本人の気持ちを落ち着かなくさせてしまうような言動をしてしまい、それを改められない場合には、自宅でその方と2人だけで過ごす時間を減らしていくことが必要であり、そのためには介護保険サービス…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(6)

前回は、認知症患者さんを不安にさせたり、興奮させるようなやりとりが病状を進行させてしまうので、認知症治療にとっては同居している方による適切なケアが不可欠なのですが、実は周りの方が本人を落ち着かなくさせる「スイッチ」を入れてしまっていること…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(5)

前回は、高齢夫婦2人暮らしではどちらか一方が認知症になったとしても、相手の方からは毎日顔をつき合わせているためになかなか気づかれにくく、症状に気づいた時には病状がかなり進行していたりするばかりか、一緒にいる相手の方も認知症を発症していたり…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(4)

前回は、認知症の人に対していわば「大人の対応」をすることに、少なからず抵抗感を感じてしまう身内の方もいらっしゃるかもしれないが、適切なケアの出発点というのは、今まで良いことも悪いことも、楽しいこともつらいことも一緒に乗り越えながら共に長い…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(3)

前回は、認知症の人に対する適切なケアとしては、本人が「穏やか」に過ごせるようにすることが一番大事であり、いわば「子供返り」してしまったような認知症の人に対しては、同じ土俵に立って言い合ったり、感情をぶつけ合ったりすると病状をどんどん進ませ…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(2)

前回は、認知症を進行させないためにはデイサービスなどを利用しながら日常的に他人と接したり、会話する機会を持つことが大事だけれども、会話の中で本人の間違いを指摘して否定したり、怒ったり、理解が難しいのに理屈を説明して納得させようとしたりする…

「お父さん!違うでしょ!」が症状を進行させる(1)

人間は社会の中でこそ人間らしく生きられる 新型コロナウイルス感染症の対応で、1~2か月デイサービスがお休みになっていたり、通うのを控えていた患者さんが多くいらっしゃいます。 その結果、動作能力が低下してしまったり、認知症の症状が進行してボー…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(10)

前回は、体内にビタミンDを増やす方法としてサプリメントから摂取する方法とどれくらい摂取したら良いのかについてお話ししました。 ただビタミンDはマグネシウムがないと体内で利用できませんが、マグネシウムも不足しやすい成分なので、日常的に食事など…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(9)

前回は、体内にビタミンDを増やす方法として食事から摂取する方法についてお話ししました。 ただビタミンDが豊富な食品は限られていることや、そのような食品を摂取するだけでは、体内のビタミンDを充足させることはなかなか難しいかもしれないというお話…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(8)

前回は、血中ビタミンDの基準値とあらゆる疾患の予防につながる目指すべき最適値をお示ししたうえで、体内にビタミンDを増やす方法として、まず日光浴をすることを挙げました。 ビタミンDは紫外線B波が皮膚に当たることで生成されますが、体内のビタミン…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(7)

前回は、免疫力の強化をはじめとして様々な効果を期待できるビタミンDですが、日本人では不足している人が少なくないため、ビタミンDを充足させることで、新型コロナウイルスを含むあらゆる疾患に対する免疫力の強化を期待できる人も多いのではないかとい…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(6)

前回は、新型コロナウイルスは細胞の表面にある「ACE2(アンギオテンシン転換酵素)」に結びつくことで人間に感染するが、それによって「ACE2」が機能不全になると、免疫を調節する「レニン-アンジオテンシン系」をうまくコントロールできなくなる…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(5)

前回は、ビタミンDが「制御性T細胞」を活性化させて免疫が過剰になるのを防ぐとともに、カテリシジンやディフェンシンといった細菌感染症のリスクを下げたり、ウイルスの生存率や複製速度を下げたりする「抗菌ペプチド」を増やして「自然免疫」を高めてく…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(4)

前回は、ビタミンDは人間の「免疫システム」を活性化させるとともに、免疫反応が過剰になりすぎないように調節(=「免疫寛容」)する役割も果たしているということをお伝えしました。 そして、もし免疫が過剰になると身体の正常な組織まで攻撃対象にして炎…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(3)

前回まで、ビタミンDが新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ可能性があることを示す4つの論文の内容をご紹介しました。 実はこれらの論文の他にも、ビタミンDが新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ可能性があることを示す最新論文が各国から次々に…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(2)

前回は、ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性があることを示す2つの論文の内容をご紹介しました。 今回はその続きになります。 新型コロナ感染症では血清ビタミンDが不足するほど死亡率が高まる!? 次にご紹介する調査研究は、2020年4…

ビタミンDが新型コロナ感染症の重症化を防ぐ可能性がある(1)

前回まで、食事習慣などを通じて「自然免疫」を強化することができれば、新型コロナウイルスの感染・重症化予防につながる可能性が高いというお話をしました。 さらに「自然免疫」を高めることは、認知症疾患を含めた多くの疾患の予防や進行を防ぐことにもつ…

免疫力を強化して新型コロナと向き合おう(3)

前回は、病原体が変異し続けている可能性が高い新型コロナウイルスに対して、病原体を特定してその「抗体」の産生を促す従来のワクチンが有効なのかについては、まだ明らかになっていないというお話をしました。 今回はその続きになります。 BCGワクチン…

免疫力を強化して新型コロナと向き合おう(2)

前回は、今世界で大流行している新型コロナウイルス感染症は、ウイルスが変異しやすく現在進行形で新たな変異株が生まれている可能性が高いというお話をしました。 今回はその続きになります。 ウイルスの病原性が高まった変異株が発見されている 4月19日…

免疫力を強化して新型コロナと向き合おう(1)

今回からは、認知症診療のお話からは一旦離れて、今世界で歴史的な大流行と大混乱を巻き起こしている新型コロナウイルスについて、最近の知見を踏まえて個人的な見解をお話ししていこうと思います。 はじめに 今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、お…