認知症診療あれこれ見聞録 ~エンヤーコラサッ 知の泉を旅して~

日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

「てんかん」から「認知症」を診る(9)~「認知症」と「てんかん」~

前回は、「ケトン食」を通じて身体のエネルギー源を「ブドウ糖」から「ケトン体」に切り替えることによって、脳神経細胞の「てんかん性異常放電」そして「てんかん発作」の抑制効果が期待できるというお話をしました。 今回はその続きになります。 「ケトン…

「てんかん」から「認知症」を診る(8)~「認知症」と「てんかん」~

前回は難治性てんかんに適応されている「ケトン食」についてご紹介するとともに、「ケトン体」が認知症の方の脳神経細胞に好ましい影響をもたらすということをお話ししました。 好ましい影響として、前回はまず「ケトン体」がアルツハイマー型認知症の方の脳…

「てんかん」から「認知症」を診る(7)~「認知症」と「てんかん」~

前回まで、認知症を伴う神経変性疾患の方は「便秘」や「体温上昇」、「低気圧」によって症状が悪化しやすく、それは「てんかん性異常放電」が誘発されやすくなるからではないかと考えられ、また「てんかん性異常放電」は神経線維の「脱髄」が生じている部位…

「てんかん」から「認知症」を診る(6)~「認知症」と「てんかん」~

前回は、認知症を伴う神経変性疾患の方は「便秘」や「体温上昇」によって症状が悪化しやすく、それは「てんかん性異常放電」が誘発されやすくなるからではないかというお話をしました。 今回はその続きになります。 低気圧も「てんかん」を誘発する!? 認知…

「てんかん」から「認知症」を診る(5)~「認知症」と「てんかん」~

今回からまた「『てんかん』から『認知症』を診る」のお話に戻ります。 前回は「認知症」と「発達障害」の治療においては、高率に合併するとともに治療が最優先されるべき「睡眠障害」の中には、「てんかん性」のものが少なからず存在しており、その場合は抗…

当院で実践する新型コロナウィルス感染予防策について

前回まで「『てんかん』から『認知症』を診る」と題して、認知症とてんかん、そして、発達障害との関連についてお話ししてきました。 今回は、一旦このテーマからは離れて、今世界中を騒がせている新型コロナウイルスに対する感染予防について、当院で実践し…

「てんかん」から「認知症」を診る(4)~「認知症」と「てんかん」~

前回は「てんかん」がある方の性格的特徴と「認知症」に移行しやすい「発達障害」傾向の方の類似性から、両者の合併率の高さや病態の同一性についてお話ししました。 今回は「認知症」はもちろん「発達障害」に合併しやすい「睡眠障害」と「てんかん」の関連…

「てんかん」から「認知症」を診る(3)~「認知症」と「てんかん」~

前回まで「認知症の症状」と「てんかん発作の症状」で重複しているものについて紹介しながら、「てんかん発作」が原因で生じる精神症状も「認知症」で出現するものと一致しているものが多い、ということをお話ししました。 今回はその続きになります。 「て…

「てんかん」から「認知症」を診る(2)~「認知症」と「てんかん」~

前回から、「てんかん」の症状や特徴を整理しながら「認知症」の様々な症状と重複している部分を探りつつ、認知症症状の中には「てんかん性異常放電」が原因で生じているものが少なくないのではないか、という仮説について検証していますが、今回はその続き…

「てんかん」から「認知症」を診る(1)~「認知症」と「てんかん」~

前回までにお話しした「意識の変容」と「高齢者てんかん」の類似性についての中で、認知症の方は頭皮脳波測定では検出できない「てんかん性異常放電」が頻発している可能性が高いことをお伝えしました。 そしてこの「てんかん性異常放電」によって、記憶障害…

「意識の変容」と「高齢者てんかん」の類似性(4)~「認知症」と「てんかん」~

前回は、日本認知症学会誌「Dementia Japan」(34:76-85,2020)に掲載された「一過性てんかん性健忘症候群」についての研究報告をご紹介しながら「認知症」と「てんかん」の類似性についてお話しし、認知症をはじめとする様々な病…

「意識の変容」と「高齢者てんかん」の類似性(3)~「認知症」と「てんかん」~

前回は、2017年にイギリスの国際生物医学ジャーナル誌「Nature Medicin」で報告された症例研究をご紹介し、認知症の方は頭皮脳波測定では検出できない「てんかん性放電」が頻発している可能性があること、それによって記憶をはじめとする認…

「意識の変容」と「高齢者てんかん」の類似性(2)~「認知症」と「てんかん」~

前回は「高齢者てんかん」についてご紹介するとともに、「意識の変容」の特徴についても再度お話ししました。 そして「高齢者てんかん」と「意識の変容」は似ているというだけでなく、一部の病態は「同一」のものではないかというお話をしましたが、今回はそ…

「意識の変容」と「高齢者てんかん」の類似性(1)~「認知症」と「てんかん」~

「意識の変容」と「てんかん」は密接に関連している!? 前回までは、レビー小体型認知症の中核的な症状である「意識の変容」についてお話ししてきました。 ただ確かにレビー小体型認知症は「意識の変容」を合併しやすいのですが、経験的に「意識の変容」は…

便秘になるとボーっとなって認知症症状が悪化する(後) ~レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(10)~

前回から、レビー小体型認知症の治療にとって中核となる「意識の変容」に対する治療の主要なアプローチ方法として③毎日から1日おきの定期的な排便習慣の確立(便秘の治療)についてお話ししていますが、今回はその続きになります。 2日出なかったら「イエ…

便秘になるとボーっとなって認知症症状が悪化する(前) ~レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(9)~

前回までは「『睡眠不足』は『認知症』への第一歩!」と題して、認知症をはじめとする生活習慣病の予防にとっては、いかに「睡眠習慣」が大事であるかについてお話ししました。 今回からはまた「レビー小体型認知症を知れば『認知症』が理解しやすくなる」の…

「睡眠不足」は「認知症」への第一歩!(後)

「認知症」は「生活習慣病」 「生活習慣病」とは、食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が深く関与し、発症の原因になっている疾患の総称になります。 日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、さらに脳血管疾患や心疾患の危険因子にな…

「睡眠不足」は「認知症」への第一歩!(前)

「睡眠不足」だと「認知症」になりやすくなる 前回までの「レビー小体型認知症を知れば『認知症』が理解しやすくなる(1)~(8)」でお話ししてきた概要を以下に整理してみます。 レビー小体型認知症は「意識の変容」が一番の主要な症状であり、「意識の…

睡眠を整えて「意識の変容」を改善させるための生活習慣 ~レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(8)~

繰り返しになりますがレビー小体型認知症の中核症状である「意識の変容」を改善させるためには、良質な睡眠習慣の確立(睡眠障害の治療)が不可欠になります。 そして前回までは良質な睡眠習慣の確立(睡眠障害の治療)のために当院で実践している投薬治療に…

夜も昼も「夢」を消すのがレビー小体型認知症治療の第一歩(後) ~レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(7)~

今回も引き続き睡眠障害を抱えている認知症の方や認知症の疑いのある高齢者に対して、当院では実際にどのような投薬治療をしているのかについてお伝えしていきます。 良質な睡眠習慣の確立(睡眠障害の治療)のために使用している薬 前回までに「意識の変容…

夜も昼も「夢」を消すのがレビー小体型認知症治療の第一歩(中) ~レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(6)~

前回から実際に睡眠障害を抱えている認知症の方や認知症の疑いのある高齢者に対し、当院ではどのような投薬治療をしているのかをお伝えしていますが、今回はその続きになります。 良質な睡眠習慣の確立(睡眠障害の治療)のために使用している薬 前回は「意…

夜も昼も「夢」を消すのがレビー小体型認知症治療の第一歩 ~レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(5)~

前回は、一部の睡眠薬が認知症を引き起こす可能性あること、さらには睡眠障害のある人はそもそも認知症に移行しやすいとも考えられるため、特に認知症の方や認知症の疑いのある方、高齢の方が睡眠薬を使用する場合には、睡眠薬の選択や使い方に細心の注意を…

「睡眠薬」を長年使用していると「認知症」になりやすくなる!?

前回まで数回にわたってレビー小体型認知症の治療にとって中核となる「意識の変容」に対する治療についてお話しし、前回から良質な睡眠習慣の確立(睡眠障害の治療)についてのお話を始めました。 今回から良質な睡眠習慣を確立するための投薬治療についてお…

レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(4)

レビー小体型認知症の治療にとって中核となる「意識の変容」に対する治療についてですが、主要なアプローチ方法として ①「意識の変容」そのものに対する投薬治療 ②良質な睡眠習慣の確立(睡眠障害の治療) ③毎日から1日おきの定期的な排便習慣の確立(便秘…

レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(3)

前回は、レビー小体型認知症の症状と治療にとっては「意識の変容」がまさに中核になるというお話をしました。 今回から「意識の変容」の具体的な治療方法についてお話ししようと思います。 「意識の変容」の治療について レビー小体型認知症の治療にとって中…

レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(2)

前回は、レビー小体型認知症では非常に多彩な認知症症状が出現するけれども、その中には他の認知症疾患でも認められるものが少なくないため、レビー小体型認知症の症状や治療について理解することは「認知症」全体を理解するうえで非常に役に立つというお話…

レビー小体型認知症を知れば「認知症」が理解しやすくなる(1)

レビー小体型認知症は認知症症状の宝庫 前回は認知症で最も多いアルツハイマー型認知症の診断についてお話しました。 今回からアルツハイマー型認知症に次いで多いレビー小体型認知症についてお話ししていきますが、レビー小体型認知症で現れる認知症症状は…

最も多いアルツハイマー型認知症の診断について

総務省統計局によると2019年の65歳以上の高齢者人口は3588万人にのぼり、これは日本の全人口の28.4%にあたるそうです。 さらに高齢者白書によると2012年の認知症患者数が約460万人で高齢者人口の15%という割合だったのが、2025…

認知症治療薬の副作用について

前回は認知症治療によく使われる向精神薬や認知症治療薬の中には、薬剤性パーキンソニズムを生じさせてしまうようなものが少なくないというお話をしました。 そこで今回は認知症治療に多用されている抗認知症薬の副作用についてお話ししたいと思います。 現…

認知症治療と薬剤性パーキンソニズム

前回は、薬の副作用で生じる薬剤性パーキンソニズムは頻繁に遭遇するものであり、投薬治療においてはいかに薬剤性パーキンソニズムを生じさせないようにするかが常に大きな課題になっているというお話をしました。 今回は「認知症治療と薬剤性パーキンソニズ…